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いつでも元気

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まちのチカラ ねぎとこんにゃく 奇岩の広がる町 群馬県下仁田町

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

紅葉が美しい荒船山(写真提供:下仁田町)

紅葉が美しい荒船山(写真提供:下仁田町)

群馬県西南部に位置する下仁田町。
世界遺産・荒船風穴をはじめ、
名産の下仁田ねぎやこんにゃくが魅力です。
奇岩の絶景が魅力の妙義山を望みながら、
自然・歴史・食をめぐる
味わい深い山里をご紹介します。

 東京都内から上信越自動車道で約1時間20分、静かな山間にある下仁田町に着きました。古くは関東と信州を結ぶ街道の要衝として栄えた町で、中心部は昭和の雰囲気を残す商店街や建物があり懐かしさを覚えます。
 特徴的なのは町から見える山々の景色。テーブルマウンテンの平らな山頂を持つ荒船山、御堂山には「じいとばあ」と呼ばれる奇岩峰。どこからでも山が近く、雄大な山々に迎えられているような気持ちになりました。

世界遺産 明治の殖産興業

 まず向かったのは荒船山の東麓にある世界遺産・荒船風穴。山の崩落岩層から吹き出す冷風を利用した、生糸の原料となる繭を作る「蚕の卵」(蚕種)の貯蔵庫です。規模は日本最大で、ここで保管された蚕種は富岡製糸場をはじめ全国各地へ供給。日本の近代産業を支えました。
 2014年には「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産としてユネスコ世界文化遺産に登録。風穴は現在、石積みの蚕種貯蔵庫跡が見学できます。
 冷気の吹き出し口に近づくと空気が急にひんやり。夏でも10℃前後の風が吹き、自然の力を利用した先人の知恵に感銘を受けます。深い山奥で涼を感じながら歴史を学べる、貴重な場所でした。

下仁田ねぎとこんにゃく手作り体験

 下仁田といえばやっぱり下仁田ねぎです。普通の長ねぎに比べて白根が極端に太く短いのが特徴。江戸時代から栽培されており「殿様ねぎ」と呼ばれる高級食材でした。今でも贈答品や冬の味覚として人気があります。
 ねぎ農家の山田夏樹さんは、2022年に地域おこし協力隊として埼玉県から移住。「このねぎに一生をかけたい」と挑戦しています。下仁田ねぎは加熱すると驚くほどやわらかく甘くなり、トロトロの食感。一本一本に農家の想いが込められた特別なねぎです。
 もうひとつの特産品はこんにゃくです。町はこんにゃくの精粉加工量が日本一。こんにゃく芋の収穫量は約95%が群馬県産で、その約半分が町内で精粉加工されています。
 誰でもこんにゃくづくりが楽しめるこんにゃく手作り体験に参加しました。講師は30年にわたり、6000人以上に教えてきた佐々木信也さん。群馬県が認定する「ぐんまの達人」の中で唯一のこんにゃく達人で、伝統の純てねり製法による高価なしらたきも手がけます。
 手作り体験は、こんにゃく粉を水で溶いた糊状のこんにゃくを練るところからスタート。糸を引くくらい粘り気が出るまで手でよく練ります。凝固剤を入れたら、再度手早く練り上げ。成形して大鍋でグツグツ茹でると、つややかなこんにゃくが完成です。
 「身近な食材だけど、知らないことが多いこんにゃくをもっと知ってもらいたい」と佐々木さん。茹でている間にこんにゃくの歴史、畑の芋や花、「蒟蒻」の漢字の書き方などを楽しく教えてくれました。手作りの出来立てこんにゃくの風味と歯切れの良さは格別でした。

巨岩迫る 妙義山山麓

 最後に下仁田ジオパークの象徴、妙義山へ。赤城山、榛名山とともに上毛三山の一つです。道を進めると、どんどん山肌が近づき、ゴツゴツと連なる奇岩が巨大屏風を立てたようで迫力満点です。
 山に入る前に妙義山南麓の中之嶽神社に立ち寄りました。境内には高さ20mの日本一のだいこく様と、その奥にご神体の轟岩がそびえ立ちます。登山道にはロープや鎖が設置されており、手足を使ってよじ登るような場面も多く登山上級者レベルの装備が必要です。山頂を目指さずとも、石門コースを歩くだけで十分に妙義山を感じることができます。
 秋には赤く染まったモミジや黄金色のカエデに囲まれ、足元は落ち葉の絨毯。第一石門から第四石門まであり、自然のアーチと紅葉が織りなす別世界が広がります。
 「石門の下をくぐると、巨岩から出るパワーを感じて気持ちが昂りますよ」と中之嶽神社の工藤貴弘宮司が話していたように、圧倒的なスケール感にやる気と元気が出てきました。町を訪れたら、立ち寄りたいおすすめコースです。
 ほかにも、130年以上の歴史を持つ日本最古の西洋式牧場「神津牧場」で見られる牛たちの大行進は圧巻。下仁田町で、ぜひ心と身体をリフレッシュしてください。 

■次回は神奈川県湯河原町です

まちのデータ

人口
5,953 人(9月1日現在)
おすすめの特産品
下仁田ねぎ、こんにゃく、上州下仁田焼
アクセス
東京から上信越自動車道で約1時間20分。JR高崎駅から下仁田駅まで上信電鉄で約60分。
問い合わせ
下仁田町観光協会
0274–67–7500

いつでも元気 2025.11 No.408