青の森 緑の海

2025年3月、沖縄県大宜味村
島である沖縄には、季節ごとにほかの土地から生きものたちが渡ってくる。夏であればアカショウビンやアジサシ、冬であればザトウクジラなどだ。
写真のサシバは、秋に渡来する鳥の代表格。10~11月頃のある日、「ピッ、クイー」という特徴的な鳴き声が聞こえると、「ああ、もうすぐ冬が来るんだな」と思う。紅葉もなく雪も降らない沖縄でも、耳をすますと季節の移ろいを感じることができる。
北から遠い空を越えて渡ってくるサシバ。群れによっては、さらに南の国々へ向かうものもいる。トビ(トンビ)のいない沖縄では〝タカ〟といえばサシバで、彼らのよく響く声は3月頃まで聞こえている。
サシバは猛禽類だ。猛禽類というとハヤブサのように飛びながら鳥を蹴落としたり、ミサゴのように水中へダイビングして大きな魚を鷲掴みするダイナミックなイメージがあるが、サシバは雑食性で、トカゲや昆虫など小動物を捕食している。
小さなバッタなどをつまんで食べているサシバを見かけると、「おいおい、いちおう猛禽だよな…」と思ってしまうが、視点を変えれば非常に省エネな生き方だ。小動物がメインということは、獲物の種類が多いため環境の変化に強く、有害物質が体内に蓄積するリスクも低いということになる。
サシバは体長50㎝センチほどで、樹上にとまっている時はさすがに存在感がある。「おっ、今の姿はカッコイイな」と思わず撮影してしまうのだ。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。
いつでも元気 2025.12 No.409
