青の森 緑の海
写真と文 今泉真也

2022年2月、鹿児島県奄美大島
第60回 幸せの赤い鳥
2023年7月号で〝青い鳥〟イソヒヨドリを紹介したが、今回は〝赤い鳥〟だ。
アカヒゲは南西諸島から九州の一部離島にかけて暮らしている。チョンチョンとすばしこく移動し飛びまわる様子と、緑の中で目立つ素敵な配色は、森の妖精のようだ。写真は奄美大島で出会った雄のアカヒゲ。沖縄島のホントウアカヒゲと違い、お腹の左右に黒い色が混ざる。島によって少しずつ生態や外見が変わるのが面白い。
アカヒゲの名は「赤毛」からきているとされるが、もうひとつ有名な話として、この鳥の学名にはなぜか「komadori」の名が入っており、本土で見られるコマドリの学名にはなんと「akahige」が入っている。種を記載する時に標本を取り違えたそうだ。
やんばるで最初に彼らを見た時、胸がキュンとした。森に暮らす赤い鳥。童話では幸せは青い鳥が運んでくるが、赤い鳥も同じように思えた。「幸せは遠くではなく近くにある」という物語のメッセージのように、彼らがいるだけで森に生命が満ちる気がする。
アカヒゲは縄張り意識が強い。テリトリーに入りこんだら、鳥であれ人間であれ厳しくチェックされる。写真の雄は歌合戦の真っただ中。30分以上にわたり交互にさえずりを披露し続け、雌が時折近くに来て聴いていた。さえずりを再現するのは難しいが、僕的にはコマドリより変化に富んだ美声だと、ひいき目に思っている。
※近年、奄美などに生息するアカヒゲと沖縄島のホントウアカヒゲは別種になった
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。
いつでも元気 2026.3 No.412
