けんこう教室 帯状疱疹

東京・鹿浜診療所
平山 陽子
水ぶくれを伴った発疹が現れる帯状疱疹。
高齢者ほどかかりやすく、ピリピリとした痛みが長引くことも。
痛みでつらい思いをしないために、どうしたらよいのでしょうか。
鹿浜診療所(東京都足立区)の平山陽子医師に
解説していただきました。
ある事例から紹介します。左のわき腹に水ぶくれができた80代のAさん。電気あんかによる火傷と考え、1カ月近く自宅で我慢した結果、痛みのため食事も取れなくなり入院することに。帯状疱疹と診断され、数種類の痛み止めが必要になりました。
自己診断は危険な帯状疱疹。発症の原因やワクチンについて解説します。
80歳までに3人に1人が発症
原因
子どもの頃に感染した水ぼうそうウイルスは、治った後も神経の中に潜伏。このウイルスが加齢、ストレス、悪性腫瘍、免疫低下などをきっかけに再活性化し、神経節に沿って現れたものが帯状疱疹です。
成人はほぼすべての方が水ぼうそうにかかったことがあるため、帯状疱疹にかかる可能性があります。特に50歳以上がかかりやすく、80歳までに3人に1人が発症するといわれています。
症状・経過
顔または体の片側の神経支配領域に沿って、帯状に痛みを伴う水ぶくれが出現します(資料1)。ピリピリとしたかゆみや痛みが数日続き、その後水ぶくれを伴う発疹が出現。3~5日かけて水ぶくれが増えていき、10~15日かけてかさぶたになって治ります。皮膚病変が正常化するまでには1カ月程度かかります。
身体中どこにでも起こることがあり、顔面に起こった場合は顔面神経麻痺や目・耳の障害につながることもあります(資料2)。重症化した場合は入院が必要です。

資料1 脇腹に現れた帯状疱疹
(日本皮膚科学会ホームページより引用)

帯状疱疹かもしれないと思ったら
帯状疱疹の特徴は「体の片側に出る」こと。ピリピリしたかゆみや痛みが体の片側に現れ、だんだんひどくなるようなら帯状疱疹の可能性が高いです。水ぶくれを伴う赤みが出てきたら間違いありません。
帯状疱疹と診断されたら、痛み止めと抗ウイルス薬を飲みます。なるべく早く(3日以内に)治療を開始することが、帯状疱疹後神経痛を予防するために大切。帯状疱疹かな?と思ったら、すぐに受診しましょう。内科または皮膚科で診てもらえます。
帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹の発症後3カ月以上痛みが続く場合、帯状疱疹後神経痛と呼ばれます。
国内の調査によると、帯状疱疹になった人のうち50~60代は13~15%、70代では20%、80歳以上の方では32・5%が帯状疱疹後神経痛を発症していました。80歳以上では実に3人に1人です。
帯状疱疹後神経痛は通常の痛み止めが効きにくく、神経痛の薬や医療用麻薬、神経ブロック注射が必要になることも。長引く痛みはQOL(生活の質)を低下させます。早期の受診が重要です。

流行激減で逆に増加傾向
帯状疱疹の原因は水ぼうそうウイルスなので、水ぼうそうにかかったことのない人は帯状疱疹にはかかりません。
2014年から子どもの水ぼうそうワクチンが定期接種になり、水ぼうそうの流行は激減しました。しかし、現在の成人の90%以上は子どもの頃に水ぼうそうにかかっており、帯状疱疹になる可能性があります。
周りに水ぼうそうの子どもが多くいた頃は、大人がウイルスに自然に触れて免疫が再活性化する、いわゆるブースター効果(追加免疫)がありました。その機会が減っている近年では、帯状疱疹になる人が増えています。
宮崎県で行われた研究では、帯状疱疹の発生率が1997年と2020年を比較して1・8倍に増加しました。

帯状疱疹ワクチンについて
2025年4月より帯状疱疹ワクチンが定期接種になりました。その年度に65歳になる方が対象ですが、2029年までの経過措置で、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方も対象になります。
帯状疱疹のワクチンは2つあります(資料3)。副反応は生ワクチンの方が少ないのですが、有効性の面から、私は不活化ワクチンをお勧めしています。
ワクチン接種費用の助成額は自治体によってまちまちです。例えば、東京都足立区では全額助成(自己負担は無料)ですが、多くの区では半額(生ワクチン4千円程度、不活化ワクチン1万円程度)にとどまっています。住んでいる自治体によって助成額に差が出るのは、まさに〝健康格差〟と言えるのではないでしょうか。
50歳以上の方は希望すれば任意接種として助成を受けられる場合があります。お住まいの自治体のホームページを参照してください。
Q 一度帯状疱疹にかかると、もうならない?
A 水ぼうそうのウイルスはかかると一生神経の中に潜んでいるため、一度帯状疱疹になってもまたかかることはあります。再発率は6.4%と言われていますが、1年以内の再発はほとんどありません。
Q 帯状疱疹はうつる?
A 水ぼうそうにかかったことのない人が帯状疱疹の湿疹に直接触れるとうつることがあります。小さいお子さんに触らせないようにしましょう。接触後72時間以内に水ぼうそうの予防接種をすると、発症を予防できることがあります。お近くの医療機関に相談してください。
いつでも元気 2026.3 No.412
