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いつでも元気

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青の森 緑の海

写真と文 今泉真也

2025年3月、沖縄県国頭村

2025年3月、沖縄県国頭村

暗闇に光る

 忘れられない森がある。沖縄本島北部、大保川の森だ。今は全て伐採されてダムの底になってしまったが、20代後半から10年間、年200日は森で撮影に打ち込んでいた。
 森と出会ったのは1997年。既にやんばるの森の撮影を始めていたものの、表面的に撮っているだけだった。ある時「森の博物館を造るので協力してほしい」と話があり、実際に見てみよう、と軽い気持ちで森に入った。
 茂みをかき分け、ハブの気配におびえながら谷に降りていくと、そこは別世界だった。谷底には沖縄では見たことのない、湿潤で豊かな森が広がっていた。3㎝を超える日本最大のドングリをつけるオキナワウラジロガシの大木もたくさんあった。
 島である沖縄は長年、水不足に悩まされてきた。河川の下流域に数多くダムを造ったため、こうした谷間の豊かな森は人知れず消えてきたと思われる。
 大興奮しながら一日中歩き回った真夜中、ふと目覚めて何気なくテントのファスナーを開けた。樹々の黒いシルエット越しに見える星空が見事だった。そして驚嘆した。その星空と対を成すように、地面一面、緑の光が散りばめられていたのだ。落ち葉を分解するバクテリアの発光だった。それから10年間、僕は魅入られるようにその森で過ごした。
 写真は同じく発光する生きもの、アミヒカリタケ。光るキノコが存在する理由はまだ明らかにされていないが、街灯もない闇の中、微かな光で生を主張している。

消えた大保川の森は、写真集『神人の祝う森』に収録されている


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。

いつでも元気 2026.4 No.413