スラヴ放浪記 スパッツ女子 ポーランドのファッション
文・写真 丸山美和(ルポライター、クラクフ在住。ポーランド国立ヤギェロン大学講師)

スパッツを履いて街を歩く女性。ポーランドのクラクフで
春爛漫。ポーランドにも太陽と花々、そして緑が輝く季節が戻ってきた。
こちらの冬は、北海道東部と同じくらいの寒さ。今冬は記録的な低温で、マイナス20℃を下回る日が何度もあった。ただ、市民が外出を控えることはなく、厚着をして出かける。
頭には毛糸の帽子を耳たぶが隠れるよう深くかぶる。分厚いコートのファスナーやボタンは、首元までしっかり閉じる。さらにその上からマフラーをぐるぐる巻きつける。それから厚手の靴下と、内側に防寒機能がついた丈が長めのブーツをはく。最後に手袋をはめて、「準備万端!」。
ロボットのような重装備で、帰宅後にブーツや衣類を脱ぐのも大仕事。ポーランドの住宅には玄関と廊下の間に「プシェドポクイ」(部屋の前の意味)という微妙な空間があり、そこでブーツや衣類を脱いで身軽になる。家の中は暖房が良く効き、半そでで過ごすことができる。分厚いコートの下に、Tシャツや薄い生地の服を着ている人が多いのは、屋内で暖かく過ごせるからだろう。
欧州の女性は体格の個人差が大きいうえ、筋肉のつき方が日本人女性とは異なる。太り気味の人も多く、長い脚の上に乗る張りのある臀部は迫力がある。日本人女性なら隠したがる人が大多数だろう。ところが欧州では臀部を強調したデザインの服が多く、彼女たちはさっそうと闊歩する。
春を迎えると、女性でよく見かける外出スタイルが、タイツやスパッツ、ぴったりとしたジーンズだ。特にポーランドでは丈の短いダウンジャケットの下に裏起毛のあるタイツやスパッツ姿で街を歩く人が多く、筆者は「スパッツ女子」と命名した。その姿はスカートやズボンをはくのを忘れてしまったかのようだ。
日本に住む筆者のパートナーがポーランドを訪れた時、彼の目の前をスパッツ女子が歩いていた。パートナーは「なぜ、そんな格好ができるのだ」と、大きなショックを受けているようだった。
親友の娘が高校生で、やはりスパッツ女子として登校している。「寒くないの?」と尋ねたが、「みんな同じ格好だし、問題ないよ」と言っていた。制服はないが、同様のスタイルで登校する生徒が多く、まるでスパッツが制服のようだった。
昨年あたりからスパッツ女子に代わり、新たな流行が出現した。裾幅が袴のように広く、床をズルズル引きずる長さのジーパンが、若者の間を席巻し始めている。
雪や雨が降った時は膝上の生地をつまんで裾を持ち上げる。水がはねないよう、腰を低く安定させながら、スススと小走りに走っていく。その様子はまるで江戸時代の侍のようで、見ていておもしろい。
まもなく夏が訪れる。屋内で強めのエアコンが効いている日本では、真夏であっても肌を露出せず、すその長いスカートやズボンを着用することが多い。
欧州の夏のファッションは、老若男女問わず半ズボンにスニーカーの人気が高い。年配の男性も膝丈のジーンズを格好よく着こなしている。女性も元気よく肌を出し、海水浴場ではお年寄りのビキニ姿もよく見かける。
ある夏の盛り。バルト海に面したポーランド北部のソポトで友人と海岸沿いを歩いていると、近くにいた見知らぬ女性が服を脱ぎ始めた。服の下に着ていたのは水着ではなく、なんと普通の下着だった。女性はその姿で歩き出すと、波打ち際に向かっていった。暑さに耐えかねたのだろうか。
目を見張る筆者に友人が気づき、「おおらかでいいじゃないの。私は時々、見かけるよ」と笑っていた。
いつでも元気 2026.5 No.414
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