まちのチカラ 大阪府和泉市 歴史と手仕事が織りなすまち
文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

槇尾山施福寺の方違大観音は
悪い方位を吉方位に変えてくれる美しい観音様
大阪府南部に位置する和泉市。
山に祈りの歴史を刻む槇尾山施福寺、
伝統のガラス工芸や地元の恵みを味わえる道の駅、
そして自由な発想から生まれた「さをり織り」。
歴史と手仕事が織りなすまちの魅力を訪ねました。
新大阪駅から電車を乗り継ぎ約1時間、和泉市に到着しました。大阪市内からほど近い場所にありながら、豊かな自然と歴史、そしてものづくり文化が息づくまちです。
仏教公伝の頃に創建された古刹
まずは市の南部、和泉山脈の山あいに佇む槇尾山施福寺に向かいました。施福寺は標高600mの槇尾山の中腹に建ち、仏教公伝(538年)からまもなくに創建された古刹で、西国三十三所観音霊場の第四番札所です。
駐車場から本堂までは、片道約1㎞の山道を30〜40分ほど登るちょっとした登山。四季折々に表情を変える山林と石段が広がる厳かな山道を、多くの参拝者や登山客が訪れます。境内に到着すると周囲の山々を望む絶景が広がります。
2015年からは、約160年ぶりに多くの仏像が一般公開されました。これは住職の長年の思いによって実現したもの。足腰を守る馬頭観音や、悪い方位を吉方位に変えてくれる座高4m超の方違大観音などを至近距離で拝観することができます。
繊細な技巧 ガラス細工
和泉市では、古くからガラス工芸が発展してきました。いずみガラスは19世紀後半に大阪・堺を中心に発展したガラス玉製造が伝わり、20世紀初頭に製造技術を確立。2024年には経済産業省から伝統的工芸品に指定されました。現在でも重要な地場産業として受け継がれており、約80人の従事者がその伝統技術を継承しています。
1927年創業の老舗佐竹ガラスは工芸ガラスの材料となる色ガラス棒の生産を守り続けています。工房では12〜15時間かけて1300℃に達した溶解炉から、赤く溶けたガラスを職人がボウトウと呼ばれる長い鉄の棒で巻き取ります。
大きな塊となったガラスをレンと呼ばれる耐火煉瓦と耐火材でできたレールの上に流し、まっすぐに引き延ばす「棒引き」という作業をします。ガラスの温度はみるみる変化するので、歩く速さを微調整しながら、ガラス棒の太さを一定に保ちます。その繊細な技はまさに熟練の職人芸。こうして作られる色ガラス棒は、実に180色以上にも及びます。
併設するガラス工芸教室では、とんぼ玉の制作体験も可能です。色とりどりのガラスをバーナーの炎でゆっくりと溶かしながら、自分だけの宝物をつくることができます。
和泉みかん 道の駅スイーツ
和泉市の特産品を味わうなら、道の駅は外せません。訪れたのは、道の駅いずみ山愛の里にある旬菜レストランつむぎ。地元の新鮮な野菜や果物をふんだんに使った料理が人気で、観光客だけでなく地元の人々も多く訪れます。
女性スタッフが多いレストランで、メニューづくりも女性の視点を大切にしています。なかでも力を入れているのがスイーツ。注目は和泉産のみかんを使ったみかんシュークリームです。大きなみかんをそのまま表現したような見た目にまず驚かされます。
サクサクなクッキー生地でみかんの皮の凹凸を表現し、色を綺麗に出すためにアルミホイルをかけて焼くなど、細かな工夫が施されています。驚くのは見た目だけではありません。地元のみかんジュースを使った自家製みかんカスタードと、鳥取県の大山の生クリームが溢れるほどたっぷり詰まっています。
「この道の駅はボリュームが大事なんです。和泉市の美味しいものをパンパンに詰めて、お客さまに楽しんでいただきたい」と語るのは、スタッフの浜田さん。
この内容で280円という価格にも驚きます。味も見た目も、そして量でも喜ばせてくれる、サービス精神あふれる道の駅でした。
自由に織る 手織りの世界
最後に訪れたのは、世界的にも知られる手織り教室の拠点手織適塾SAORI本店(さをりの森)です。ここで行われているのはさをり織り。1960年代に城みさをさんによって生まれた織りのスタイルで「機械のように正確に織るのではなく、人それぞれの個性を表現する」という考え方が特徴です。伝統的な手織りの世界から見ると画期的で、間違いや失敗とされてきた織りムラやキズさえも、逆転の発想で味やデザインと捉えます。
教室には体験コースがあり、気軽に小さな織り機の前に座ることができます。奥の棚には綿や麻、ウールなど世界中から集められた多種多様な糸が並び、その日の気分で自由に選んでいきます。
布を織るのではなくて自分を織る。そんな言葉がぴったりの時間の中で、人それぞれの感性が一枚の布となって形になる。和泉のものづくり文化の奥深さと、人の個性を大切にする温かな精神を感じる場所でした。
ほかにも、弥生時代の遺構が復元された池上曽根史跡公園や、大阪府立弥生文化博物館など見どころがたくさん。歴史を刻み、手仕事を育んできた和泉市。歩くほどに温もりに出会える旅へ、ぜひ出かけてみてください。
■次回は山梨県身延町です。
まちのデータ
人口
18万1202人(1月末現在)
おすすめの特産品
和泉みかん、いずみガラス、和泉木綿、泉州水ナス、タマネギ、いずみパール
アクセス
JR阪和線天王寺駅から和泉府中駅まで快速で約20分
問い合わせ
和泉市いずみの国 観光おもてなし処 和泉府中
0725-40-5552
いつでも元気 2026.5 No.414
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