けんこう教室 未来のためにロコモ予防
「階段を上るのが億劫になった」
「何もないところでつまずいてしまった」
このような体の変化に心当たりはありませんか?
それは、ロコモティブシンドロームのサインかもしれません。
骨や筋肉の機能が低下した状態を放置すると、要介護や寝たきりになるリスクも。
理学療法士の北川翔太さんが原因や予防法を解説します。
ロコモと健康寿命
ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、「体を動かすパーツ(運動器)がうまく働かなくなり、立つ・歩くなどの移動機能が低下した状態」のこと。「ロコモティブ」は英語のlocomotion(移動)が由来で、まさに「移動すること」に関わる症候群であることがわかります。
ロコモは健康寿命と深く関係しています。健康寿命は、介護や支援を受けずに自立して健康に生活できる期間のことです。
日本人の平均寿命は男性約81歳、女性87歳。対して、健康寿命は男性約72歳、女性75歳と、男性で9年、女性で12年の差があります。この期間は、生活する上で誰かの助けが必要となります。
介護が必要となる大きな原因の一つが、転倒による骨折や関節の病気といった運動器の障害なのです。ロコモを予防することは、健康寿命と平均寿命の差を縮め、「最期まで自分らしく元気に生きる」ために非常に重要だと言えます。
ご自身の身体の状態を知るために、日本整形外科学会が提唱する7つのロコチェック(資料)を紹介します。一つでも当てはまればロコモの可能性がありますが、怖がる必要はありません。早期に対策を始めるために、さっそくチェックしてみましょう。

知っておきたい3つの原因
ロコモは、いくつかの要因が重なって引き起こされます。ここでは、主な3つの原因を見ていきましょう。
①運動器そのものの原因
代表的なものは次の3つです。
変形性関節症:膝などの関節にあるクッション(軟骨)がすり減り、痛みや動きの制限が起きます。
骨粗鬆症:骨の密度が低下してもろくなり、わずかな衝撃で骨折してしまいます。
変形性脊椎症:加齢などにより背骨が変形し、腰や首に痛みが出ます。
②加齢による自然な衰え
私たちの筋力や骨の強さ(骨密度)は、20〜30代をピークに自然と低下。若い頃は意識せずに保てていた体の機能も、少しずつ衰えていきます。だからこそ、日頃の運動習慣を身につけ、筋肉や骨の貯筋をすることが非常に大切です。
③運動不足という現代の課題
便利な生活は運動の機会を奪います。運動不足は、筋力やバランス能力の低下を招く最大の原因の一つ。これは年齢に関わらず、誰にでも当てはまることです。そして、「自分の意思で改善できる」という点も重要です。
自宅でできるロコトレ
ロコモ対策の基本となる運動がロコモーショントレーニング「ロコトレ」です。
自立した生活を送るうえで大切なのは、バランス能力と足腰の筋力。移動機能の土台となる力を鍛えましょう。
ここでは、最も代表的で効果的な2つのロコトレを紹介します。無理のない範囲で毎日続けることが大切です。
ロコトレ① 片脚立ち
ふらつきを減らし、安定した歩行に不可欠なバランス能力の向上が目的です。
最初はふらついても大丈夫。毎日少しずつ続けることで、バランス感覚が養われます。
ロコトレ② スクワット
立ち上がりや歩行に必要な足腰の筋力を強化します。この運動をマスターすることが、ロコモ予防に直結します。
膝に痛みがある方は、いすを使った立ち座り運動から始め、痛みのない範囲で徐々に慣らしていきましょう。正しいフォームで行うことが大切です。
「たったこれだけ?」と思うかもしれませんが、大切なのは毎日続けることです。

未来の自分のために貯筋を始めよう
最後に大切なポイントを振り返りましょう。
•ロコモは移動機能が低下した状態で、将来の要介護リスクを高めます。
•ロコモは特別なことではなく、加齢や運動不足で誰にでも起こりうる問題です。
•ロコモは、日々の簡単な運動で予防や改善ができます。
まずはテレビを見ながら、1分間の片脚立ちから始めてみませんか?
その小さな一歩が、10年後、20年後の元気なあなたにつながります。
いつでも元気 2026.5 No.414

