まちのチカラ 山梨県身延町 本栖湖のブルーと身延山の緑
文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

日の出前の本栖湖に映る逆さ富士
山梨県南部に位置する身延町。
日蓮宗の総本山として多くの参拝者を迎えてきた身延山、
静かな山あいに湧く下部温泉と清らかな水の恵み、
そして砂金採りや本栖湖で楽しむ自然体験の数々。
歴史と自然に包まれ、心ほどけるひとときを訪ねました。
東京から車で約2時間半、雄大な山並みに抱かれた身延町に到着しました。町の中央には日本三大急流の一つである富士川が流れ、北に西嶋和紙の産地、南に身延山、東には下部温泉郷や富士五湖のひとつ、本栖湖が広がります。
287段の石段の先
まずは町の象徴ともいえる身延山久遠寺へ。鎌倉時代に日蓮聖人によって開かれた日蓮宗の総本山で、全国から多くの参拝者が訪れます。三門をくぐり、境内へと続くのは287段の石段・菩提梯。一段一段踏みしめながら登る時間は、自分と向き合う静かなひとときでもあります。石段を上りきった先に広がる本堂は荘厳で、凛とした空気に包まれていました。
春にはしだれ桜が境内を彩り、秋には紅葉が山を染め上げます。駐車場からはエレベーターも整備されているので、足に自信のない方でも安心して参拝できます。また、久遠寺と身延山山頂の奥之院思親閣を結ぶ全長1655mのロープウェイもお勧めで、雄大なパノラマを満喫することができます。
信玄公と裕次郎を癒やした湯
下部温泉は、1300年の歴史を繋ぐ名湯です。ぬるめの湯にじっくり浸かる湯治文化が特徴で、武田信玄公も刀傷を治癒したと伝えられています。中でも下部ホテルは、3つの異なる源泉を12の湯船で楽しめる点が大きな魅力。アルカリ性単純温泉や高温源泉など複数の湯を一度に味わうことができます。
昭和の大スター石原裕次郎も、複雑骨折した際に2カ月の湯治に訪れて驚異的な回復を見せたとのこと。「ぬる湯と熱めの湯に交互に入浴することで、リラックス効果を高める交互浴がお勧めですよ」と代表取締役社長の矢崎道紀さんが案内してくれました。
温泉のあとの食事はビュッフェ形式で、地元の食材を活かした料理が提供されます。特に清流で育ったヤマメの塩焼きが人気で、敷地内の釣り堀で釣って夕飯に食べることができるため、ファミリーで楽しめます。
さらにこの宿の大きな特徴として、38年間続く武田信玄公出陣太鼓ショーが毎晩行われています。スタッフによる和太鼓の演奏、宿泊客参加型の餅つき大会もあり、来館者同士で盛り上がります。他にも童心に帰るこども縁日(季節限定)や池の鯉を眺めながら入れる足湯など、心身ともに回復できること間違いなしです。
紙漉きに触れる
昔ながらの手漉き和紙の技術と美しさを今に伝える西嶋和紙。戦国時代から約400年の歴史を持ち、今も多くの書道家に愛される風雅な和紙です。
その魅力を体感できる施設として道の駅にしじま和紙の里かみすきパークがあり、初心者でも楽しめる紙漉き体験でオリジナルの和紙作品を作ることができます。地域の文化やものづくりの奥深さに触れられる、観光にも学びにも適したスポットです。
砂金採りに夢中
富士山の西麓につらなる毛無山(標高1964m)の中腹、下部川の源に日本最古級の山金山である湯之奥金山遺跡があります。金の採掘は、戦国時代から江戸時代初めにかけて行われ、最盛期には鉱石1トンあたり数10グラムという高い金の含有量を誇りました。
金山の歴史を後世に伝えるため、1997年には下部温泉郷の入り口に甲斐黄金村・湯之奥金山博物館が開館しました。館内は映像シアターやジオラマ模型、資料展示室などで構成されています。ここで人気なのが、砂金採り体験。金の比重を利用した鉱山作業のひとつ「汰りわけ」を実体験できます。砂を揺すって流す作業を繰り返すと、重い金だけが皿に残ります。
「最初はなかなか見つからなくても、コツをつかむとキラリと光る小さな金が姿を現しますよ」と、学芸員の伊藤佳世さんが指南してくれました。採った砂金は小瓶に入れてお土産にできるほか、アクセサリーなどにして持ち帰ることもできます。
芸術的な景勝地 本栖湖
旅の締めくくりに訪れたのは、旧千円札にも描かれた逆さ富士で有名な本栖湖。2013年には世界文化遺産の富士山—信仰の対象と芸術の源泉の構成資産として登録された、富士五湖の最西端に位置する湖です。最大水深121・6mを誇る透明度の高い美しい湖として知られています。
本栖湖は自然体験ができる宝庫。湖面に映る富士山に抱かれながら楽しむサップやカヌーなど、開放感抜群です。湖畔でのキャンプやトレッキングも外せません。
祈りの山で心を整え、温泉で体を癒やし、大自然の中で遊ぶ。身延町には、日常を少し離れて自分を見つめ直す時間が流れていました。
■次回は茨城県ひたちなか市です。
まちのデータ
人口
9287人(4月1日現在)
おすすめの特産品
あけぼの大豆、西嶋和紙、下部味噌、しいたけ、ゆば
アクセス
東京から車で約2時間半、JR甲府駅から身延駅まで特急で50分
問い合わせ
身延町役場
0556–42–2111
いつでも元気 2026.6 No.415
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