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いつでも元気

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けんこう教室 片頭痛に悩むあなたへ

京都民医連中央病院 脳神経外科科長 西尾 晋作

「頭が痛い」。誰もが一度は口にしたことがあるのでは?
気になってはいても、つい放置してしまいがちな頭痛。
知ってるようで知らない頭痛について、
京都民医連中央病院の西尾晋作医師に解説してもらいます。

 頭痛を経験したことのない方はおそらくいないでしょう。紀元前1200年ごろの古代エジプトから頭痛に関する記録があり、ベートーベンやピカソ、ダーウィン、チャイコフスキー、夏目漱石なども頭痛に悩まされていました。
 頭痛にはさまざまな種類がありますが、大まかには、何らかの病気の症状として起こる二次性頭痛と、頭痛の原因となる病気がない一次性頭痛に分類できます。
 米国神経学会誌『Neurology』は2019年、危険な二次性頭痛を疑う15の項目「SNNOOP10」(資料1)を報告。放置すると命にかかわる病気が隠れており、診断および治療が必要となります。
 検査で異常が見当たらない頭痛を一次性頭痛と呼び、緊張性頭痛や三叉神経痛、片頭痛などがあります。
 緊張性頭痛は有病率20%程度で最も一般的な頭痛です。頭蓋周囲(頭・首・肩)の筋肉の圧痛があり、肩こりのような状況を想像するとわかりやすいでしょう。神経痛には三叉神経痛以外にも群発頭痛などがあります。
 なお一次性頭痛の場合は通常、放置しても生命の危険などはありません。

SNNOOP10はリストの15項目の頭文字から作った呼称

片頭痛の前兆症状

 一次性頭痛の中でもいわゆる〝頭痛持ち〟の代名詞、片頭痛を詳しく解説します。
 日本人の片頭痛の有病率は8・4%、女性では12・9%、最も多い30代女性では20%に上ります。片頭痛は女性の生理と深く関連し、小学校高学年ごろから増え始め、30代後半から40代前半の女性に多く見られます。片頭痛の人の74%が日常生活に支障を感じており、それでも仕事を休めない人が68%もいるそうです。
 片頭痛の前兆として、痛みの発生60分以内に起きて自然に消失する神経症状があり、5分から60分持続する場合があります。
 有名なものは閃輝暗点(資料2)と言い、視界にギザギザした光の輪が小さく現れ、次第に広がって消えていきます。葛飾北斎は創作中に目の痛みや頭痛に悩まされていたそうで、「チカチカした模様が見える」という記述は前兆を伴う片頭痛を思わせます。
 芥川龍之介は遺作『歯車』の中で、「僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。(中略)絶えずまわっている半透明の歯車だった。僕はこう云う経験を前にも何度か持ち合せていた。歯車は次第に数を殖やし、半ば僕の視野を塞いでしまう、が、それも長いことではない、暫らくの後には消え失せる代りに今度は頭痛を感じはじめる」と、閃輝暗点からの片頭痛を表現しています。
 片頭痛発作の最中は光や音、匂いに敏感になり、嘔吐を伴うこともあります。紫式部は日記に「頭が痛くて、灯りもつらい」と書いています。日本最古の医学書『医心方』にも、発作時のめまい(前兆)やまぶしい感じ(光過敏)、目の前がぼんやり(閃輝暗点)した後にむかむかしてすぐ吐いてしまうが、しばらく経つと治ってしまうという記載があるそうです。
 『不思議の国のアリス』で有名なルイス・キャロルも頭痛持ち。物語の中には、外界が小さく見える小視症、大きく感じる大視症、歪んで見える変視症が登場します。

薬の飲み過ぎに注意

 片頭痛は気圧の影響も受けやすいようです。しかし、平均気圧(1013ヘクトパスカル)から下がれば下がるほど片頭痛が生じやすくなるというわけではなく、「気圧が5ヘクトパスカル以上低下する前日に片頭痛が悪化し、5ヘクトパスカル以上高くなる2日前に改善する」という報告もあります。
 ズキズキする痛み以外にも多彩な症状を起こす片頭痛。初期であれば比較的容易に診断でき、痛み止めで劇的に改善します。しかし慢性片頭痛になると頭痛の回数も増え、特徴も曖昧になり、痛み止めも効かなくなってきます。片頭痛患者のうち年間で3%が慢性片頭痛に移行し、7割は治療でもとに戻りますが、3割は治りません。
 正しく片頭痛と診断されている人は25%とも言われます。実際のところ「頭痛ぐらいたいしたことない」「誰にでもある」「たかが頭痛で病院にいくなんて面倒」と、市販の頭痛薬を飲んでやり過ごす方も多いのではないでしょうか。背後に重大な病気が隠れている可能性もあり、注意が必要です。
 さらに、薬の使い過ぎにより痛みを感じ始める強さ(閾値)が下がり、内服量が増える悪循環(資料3)をきたすこともあります。こういった薬物乱用性頭痛の場合、いったん頭痛薬をすべて中止する必要も出てきます。

正しく知って 正しく治療

 5つの生活習慣が片頭痛のリスクを直接的に高めるとされています。
 ①飲酒頻度の高さ(週に何度も飲む人ほどリスク上昇)②喫煙歴の長さ(一生の中でどれだけ吸ったかが重要)③不眠症(睡眠の質、量ともに重要)④睡眠過多(7時間を大きく超える長時間睡眠も注意)⑤高血圧の5つの因子です。
 タイプ別に見ると【前兆あり】では、糖質・砂糖の摂取量が多いこと、喫煙歴、飲酒頻度、高血圧、不眠がリスクを高め、初産年齢が遅いことはリスクを下げます。【前兆なし】の場合は、飲酒頻度、高血圧、不眠、初産年齢が早いことがリスク上昇に関連します。
 一般的に空腹は片頭痛を誘発するので、3食きちんと食べることが大切です。また、夏場の強い日差しを避けること、適度な運動や十分な睡眠(寝過ぎは禁物)が大事。患者さん自身が自分の頭痛の特徴を理解するためには、頭痛日記をつけることも大変重要だと考えます。
 片頭痛が起きる仕組みには諸説あります。現在は、三叉神経の刺激で血管に炎症物質が放出され、血管の拡張や炎症を引き起こす「三叉神経血管説」が有力で、治療薬が次々に開発されています。
 片頭痛治療の柱は正しく診断して正しく治療することです。頭痛があると寝込んでしまう、頭痛があっても休めないなどで悩んでいる方は、ぜひ脳神経外科や脳神経内科などの医療機関に相談することをお勧めします。

いつでも元気 2026.6 No.415