くすりの話 定期接種が始まったRSウイルスワクチン
執筆/吉井 彩(東京・大泉生協病院、薬剤師)
監修/石井 亮(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)
読者のみなさんから寄せられた質問に
薬剤師がお答えします。
今回は、妊婦への定期接種が始まった
RSウイルスワクチンについて解説します。
RSウイルスは小児や高齢者に呼吸器症状を引き起こすウイルスで、2歳までにほぼ全ての乳幼児が少なくとも1度は感染すると言われています。
感染すると発熱、鼻水、咳などの症状が出ます。初めて感染した乳幼児の約7割は軽症で数日のうちに軽快しますが、約3割で咳が悪化し重症化することがあります。
2010年代には、2歳未満の乳幼児12万~18万人(年間)がRSウイルス感染症と診断され、3万~5万人が入院しています。特に生後間もない赤ちゃんは注意が必要です。
母子免疫ワクチン
そこで「母子免疫」を利用したワクチンが考え出されました。母子免疫とは妊娠中のお母さんがワクチンを接種し、胎盤を通じて体内で作られた抗体の一部を赤ちゃんへ移行させることで、生後早期から感染症に対する防御力を持つという仕組みです。
この仕組みを利用したRSウイルスワクチンアブリスボは妊娠中のお母さんに接種するワクチンで、生まれてきた赤ちゃんのRSウイルス感染症の重症化を予防する効果が期待されています。
アブリスボの定期接種開始
2026年度より妊娠28~36週の妊婦の方を対象に定期接種が開始となりました。この期間内に1回接種となります。
定期接種ですので、公費により無料です。公費で接種できる場所は指定されていますので、各自治体へご確認下さい。
現時点で、乳幼児に直接接種するRSウイルスワクチンはありませんが、ベイフォータスという乳幼児に投与(注射)する抗体製剤はあります。ただし現在、早産や難病などの乳幼児が保険対象で、その他の乳幼児は保険外になります。定期接種化を視野に入れた予防接種法の改正方針が議論されており、今後の対応にご注視ください。

ワクチンの安全性
ワクチンの接種後に、副反応が発生することがあります。主な副反応は接種部位の症状(疼痛、腫脹、紅斑)、頭痛、発熱、筋肉痛などです。接種後、気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。
感染症を完全に防ぐことは難しいですが、重症化を予防することは可能です。母子免疫ワクチンは、赤ちゃんを守るための新しい選択肢の1つとなるでしょう。
いつでも元気 2026.7 No.416
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