青の森 緑の海
ひとつの海、ひとつの民

2026年4月 沖縄県宜野湾市
人工衛星で現在地を正確に把握するGPS(全地球測位システム)。航空機やカーナビにも使われ、いまや当たり前になっている。こうした便利な道具を使わず、風や波、潮流、太陽や星座などの情報を読み取る昔ながらの航海術で旅をする船がある。アリンガノ・マイス号。伝統の継承を使命とする南洋の国パラオの帆船だ。2月に出航、台湾を経て4月に沖縄へ到着した。
船名は現地の言葉で「落ちたパンノキの実」の意味。パラオには「落ちたパンノキの実は誰でも拾ってよい」という約束があり、「奪い合わず、皆で分かち合おう。知恵も島々で分かち合おう」との願いが込められている。伝説的航海士であった父の想いを受け継ぐセサリオ船長の言葉が印象的だ。
「この沖縄に立っているのは不思議です。先祖の魂が我々を結びつけてくれたのかもしれない。これからサイパンへ向かいますが、我々には次の世代に伝統を継承する責任があります。サイパンはいまでこそアメリカの統治下ですが、我々は昔、〝ひとつの民〟であったことを思い起こすために、この航海を続けます」。
写真は沖縄を出航したところ。まだ帆は上げず、小さな船外機で進む。サイパンまでの2200㎞は、途中立ち寄る島がない。風がなければ3週間超の長旅となる。パラオを出てから故郷に戻るまでの総距離は約1万1400㎞。「One Ocean, One Family」というメッセージを掲げ、過去と未来をつないで進んでいく。
その後、マイス号は度重なる嵐のためサイパン寄港を断念、5月11日にパラオへ戻った。次回は行けなかった島々に必ず向かうという。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。
いつでも元気 2026.8 No.417
