まちのチカラ 東京・千住地域 歴史とモダンが行き交うまち
文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

旧日光街道沿いの宿場町通り商店街は昔も今も多くの人でにぎわう
第17回全日本民医連共同組織活動交流集会が
9月27~28日、東京都有明で行われます。
今回は集会開催地特別編として、
都内の千住地域を取り上げます。
千住は江戸時代に整備された五街道のうち、日光街道・奥州街道の最初の宿場町千住宿として発展しました。1625年(寛永2年)に誕生し、2025年に開宿400年を迎えました。
大正時代から続く佃煮屋
まちを歩くと、旧日光街道沿いには100本を超える路地が魚の骨のように広がっています。江戸時代の建物を残す紙問屋の横山家や名倉医院、徳川将軍家ゆかりの勝専寺(赤門寺)など、かつての宿場町を今に伝える建物が点在します。
下町情緒あふれる商店街で、昔ながらの店構えに惹かれて立ち寄ったのが佃煮屋鮒秋です。1917年(大正6年)に曾祖父が創業した店を継いだのは、5代目の今井健蔵さん。荒川と隅田川に囲まれ、川魚が豊富だった千住には佃煮屋が多かったようですが、今や鮒秋だけが営業を続けています。「100年以上続くこの店を守りたいのは、かわいがってくれたおじいちゃんへの恩返しでもあります」と今井さん。
伝統を守る一方で、量り売りから小分けパック販売に変更し、商品を50〜60種に増やして佃煮デパートにしようと新しい取り組みにも挑戦。一番人気のあさりの佃煮のほか、唐辛子のハラペーニョを使った個性的な佃煮など新しい味も提供しています。
高校生に人気の昭和喫茶
千住の路地裏に佇む喫茶蔵は、大正時代の質蔵を活用したレトロな喫茶店です。重厚な壁や木材など当時の面影を色濃く残します。
創業者である母親の思いを受け継ぎ、半年前に店を継いだ大和田光浩さん。昭和レトロブームの追い風もあり、現在はSNSを通じて、高校生を中心に若い世代から注目を集める人気店に。
看板メニューは幸せを呼ぶ四つ葉のクローバーホットケーキ。7色のカラフルなレインボークリームソーダも好評です。若い世代に流行している推しカラー文化と相性が良く、高校生たちが写真撮影を楽しむ姿が見られます。
一方で、サイフォンで淹れる熱々のコーヒーや昔ながらの固めの自家製プリンなど、昭和喫茶ならではの味も大切にしています。100種類以上あるコーヒーカップを、お客さんに合わせて選ぶのもこだわりの一つです。
ぬくもりが人をつつむ銭湯
千住のまちを歩くと、今も地域に根付く銭湯文化に出会えます。午後3時の開店時間に、湯あそびひろばニコニコ湯の前で、風呂桶を手にした近隣住民が暖簾のかかる瞬間を待っていました。
1952年(昭和27年)創業のニコニコ湯は、3代目の鈴木秀和さん夫婦が営んでいます。毎日、窯で湯を沸かすなど手間はかかりますが、「災害時でもお風呂に入れるように」との思いから、今でも薪窯を使い続けています。
館内にはジェットバスや子ども向けの小さなプールがあり、親子連れにも親しまれています。マラソンランナーや観光客の利用も増加。オリジナルグッズの制作や音楽ライブ、マルシェの開催など、銭湯の枠を超えた活動にも積極的に取り組んでいます。
「銭湯はお風呂に入るだけの場所ではなく、人と人がつながる場所」と語る鈴木さん。その言葉どおり、交流が自然に生まれる下町の居場所として、ニコニコ湯は今日も多くの人を温かく迎えます。
つながり支える健康友の会
最後に訪れたのは、民医連の共同組織・足立健康友の会です。現在、北千住・千住西・かばら・北地域の4支部を中心に約4500人の会員が参加し、「仲間増やし」「会員とのつながり」「健康づくり」を合言葉に活動。体操や輪投げ、健康麻雀、カラオケ、コーラスなどのサークル活動に加え、学習会や日帰り旅行、七福神巡りなども実施しています。
今回取材したあおぞら健康体操は、コロナ禍で食事会が弁当配布となったことをきっかけに、引きこもり防止のためにスタートしました。毎週月曜の午前10時半から、20〜30人ほどが柳原リハビリテーション病院前の公園や雨天の時は室内で行います。
作業療法士の小日向洋さんの指導のもと、ストレッチや軽運動、脳トレ体操が行われ、参加者からは「わかりやすくて家でもできる」と好評です。毎回多くの住民が参加し、体操を通じた健康づくりだけでなく、通りかかった地域住民や子どもたちとの交流も生まれており、地域のつながりづくりにも一役買っています。
一方で、会員や役員の高齢化という課題もあります。
しかし、本部事務局の吉岡光二さんは「高齢者が中心と言われますが、多くの活動が継続されて活発さを実感します」と話します。長年培われた地域の絆を大切にしながら、新たな参加者も迎え入れ、誰もが安心して住み続けられるまちづくりを目指しています。
江戸時代から続く宿場町の歴史、昭和の面影を残す喫茶店、人情味あふれる銭湯、そして地域を支える人々の取り組み。千住には、歴史の足跡と現代の活気が交差する風景があります。
■次回は千葉県御宿町です。
まちのデータ
人口
70万8138人(足立区・6月1日現在)
おすすめの特産品・工芸品
小松菜(あだち菜)、枝豆、東京打刃物、江戸刺繍、江戸和笛
アクセス
上野駅からJR常磐線快速や東京メトロ日比谷線で北千住駅まで10分
問い合わせ
(一財)足立区観光交流協会
03-3880-5853
いつでも元気 2026.8 No.417
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