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いつでも元気

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けんこう教室 高齢者の熱中症

岡山協立病院 総合診療科 一瀬 直日

岡山協立病院 総合診療科

一瀬 直日

猛暑、酷暑、激暑、炎暑…。
文字を見るだけでジトーッと汗が出てきそうです。
近年は〝災害級〟とも言える危険な暑さが続く日本の夏。
特に注意が必要な高齢者の熱中症について、
岡山協立病院(岡山市)の医師が解説します。

 夏になるとテレビや新聞で毎日のように見聞きする熱中症。「涼しい場所で水分をよくとって過ごしましょう」という注意喚起を知らない人はいないでしょう。
 熱中症は高温の環境で体温の調節機能が破綻し、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れて発症する障害の総称です。重症化すれば死に至る危険性があります。
 炎天下の活動で身体が直接あたためられるとともに、作業や運動で体温が上昇。このダブルパンチで体に熱がたまります。畑で倒れていた患者さんが救急搬送され、体温が40℃になっていたというケースを実際に経験しました。

記録ずくめの暑さ

 日本気象協会「WeatherX」によると、昨夏の平均気温は平年差+2・36℃で、1898年の統計開始以来最も暑い夏でした(資料1)。最高気温40℃以上の地点は延べ30地点と過去最多を記録。最高気温35℃以上の猛暑日の地点も延べ9385地点と、2010年以降で最多となりました。「最高気温40℃」という報道が珍しくなくなったことに、危機感を覚えます。
 これだけ気温が上がれば当然ですが、全国の熱中症による救急搬送者数(5〜9月)も、調査開始以来初めて10万人を超えました(資料2)。

高齢者の身体的特徴

 身体に必要な水分が足りない状態を脱水症といいます。高齢者は脱水症になっても口の渇きを感じにくいため、水分を摂取するタイミングが遅れがち。
 身体に保持できる水分量も若い人より少なく、少しの発汗でも身体の各臓器に脱水症の影響が出やすくなります。逆に、こまめに少しずつでも水分を補充すれば脱水症から回復できます。コップ1杯でもよいので水分を摂取することが大切です。
 また、高齢になると発汗や体温調整の機能が低下するため、脱水症に引き続いて熱中症をおこすリスクが高まると考えられます。

岡山協立病院の調査で分かったこと

 危険なのは屋外だけとは限りません。愛知県名古屋市の救急病院が2006年と翌年、7〜9月の自宅内で発症した熱中症と空調設備の使用状況を調査しました。熱中症受診104例中、自宅内発症は16例。全員が65歳以上の高齢者でした。これは、熱中症で入院した20例の高齢者の8割を占めています。高齢者ほど屋内での熱中症リスクが高く、重症化しやすいことが分かります。
 高齢者の屋内熱中症の実態をさらに明らかにするため、岡山協立病院では梅雨明け後の25年7月〜9月半ばに緊急入院した全患者(熱中症を含むすべての疾患)について、空調設備の有無と使用状況、所得レベルなどを調査しました。
 調査期間中、緊急入院の3位が熱中症(1位・尿路感染症、2位・肺炎)で、24例が入院しました。このうち屋内熱中症は11例を占め、平均年齢は72歳。11例のうち空調設備を「ほぼ使用していた」のは4例(36%)。空調設備を「持っていない」のは1例だけで、使用控えが目立ちます。
 ちなみに熱中症以外の入院患者では、90%が空調設備を常時使用していました。空調設備の使用控えが、他疾患よりも熱中症による緊急入院につながっていることがわかります。
 実は、屋内熱中症での入院患者11例全員が所得レベル中間層未満に相当し、生活保護世帯が4例含まれていました。所得レベルが低いほど、空調設備の使用控えの程度が強くなる傾向もわかりました。

高齢者の熱中症を防ぐために

①アラートが発表されたら
 熱中症警戒アラートは気象庁と環境省が共同で発表する情報で、熱中症の危険性に対する「気づき」を促すものです。
 気温や湿度、日射量などをもとに暑さ指数WBGT)を算出し、指数33以上で熱中症警戒アラート、35以上で熱中症特別警戒アラートが発表されます(資料3)。特別警戒アラートが発表された日は、広域的に過去に例のない危険な暑さとなり、まさに「災害級の暑さ」が予測されます。涼しい環境で過ごすことや、こまめな休憩、水分塩分補給を心がけ、高齢者や乳幼児をよりしっかり見守る必要があります。

②避難場所を確保
 空調設備の使用控えなど、経済的問題で涼しい環境が作れない場合は、暑くなる前にクーリングシェルターへ避難することを計画しましょう。シェルターは危険な暑さから避難できる場所として市町村長が指定した施設で、熱中症特別警戒アラートの発表期間中に一般に開放されます。

③事業所をシェルターに
 病院や診療所、薬局、介護施設の空いているスペースや時間帯を見直して、クーリングシェルターとして登録できる可能性があります。
 ただ座って過ごすだけではなく、健康教室やストレッチ体操など、健康づくり活動を同時に提供することもできるでしょう。登録できる要件や手続きは自治体ごとに定められています。あなたの事業所をシェルターにしてみませんか?

④行政への働きかけ
 経済的困窮による生活困難者は、熱中症のリスクにさらされる災害弱者です。空調設備購入の補助やクーリングシェルター設置施設への支援など、災害弱者を救う政策を実現するよう、行政への働きかけが必要です。
 高齢者の日常生活徒歩圏内(半径500m)に1つのクーリングシェルターがあれば、安心して暮らせる町になっていくのではないでしょうか。

 熱中症への対策は多面的に迅速に行わないと、命を脅かしかねない事態になります。今日からでもできることを考え、実行し、酷暑の夏を乗り越えましょう。

いつでも元気 2026.8 No.417