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いつでも元気

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まちのチカラ 千葉県御宿町 白砂きらめく外房の海辺

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

砂紋が広がる御宿海岸(提供:(一社)御宿町観光協会)

砂紋が広がる御宿海岸(提供:(一社)御宿町観光協会)

千葉県の南東、房総半島に位置する御宿町。
童謡「月の沙漠」が生まれた白い砂浜、
江戸時代初期にスペイン船を救助した歴史、
伊勢えびなどの海の幸や海女文化が魅力です。

 東京駅から特急わかしおで約1時間25分。JR御宿駅に到着しました。気候は年間を通じて温暖。海岸は約2㎞にわたる真っ白な砂浜が広がり、毎年多くの海水浴客でにぎわう房総を代表するビーチです。

月の沙漠をはるばると

 この美しい海岸は、童謡月の沙漠の舞台として知られています。大正から昭和にかけて活躍した詩人・抒情画家の加藤まさおが、結核療養のために御宿を訪れ、この海岸の風景から着想を得て詩を生み出したそうです。
 海岸には、ラクダに乗った王子と姫の月の沙漠記念像が静かに海を見つめています。月明かりの砂浜を旅する2人を表現したこの像と背景の海は、町のシンボル。隣接する月の沙漠記念館では、加藤まさおの作品や資料が展示され、童謡誕生の背景を知ることができます。
 町には人々の温かさを物語る歴史も。今から約400年前の1609年、スペイン船サン・フランシスコ号がフィリピンからメキシコに向かう途中、岩和田沖で嵐に遭い座礁。当時の岩和田村(1955年に御宿町と合併)の人々は総出で救出にあたり、凍えた乗組員を素肌で温め、衣服や食料を惜しみなく提供したと伝えられています。
 373人の乗組員のうち317人の命が救われ、この出来事は日本・スペイン・メキシコの交流の原点に。現在は日・西・墨三国交通発祥記念之碑が建ち、海を見渡す丘から当時の出来事に思いを巡らせることができます。

海が育てた御宿の味

 町を訪れたら、ぜひ味わいたいのが新鮮な海の幸。なかでも伊勢えびは器械根と呼ばれる御宿沖の豊かな磯場で育ちます。
 豊富なエサを食べて育った伊勢えびは身が締まり、鮮やかな色合いと濃厚な甘みが特徴。漁は刺し綱漁で行われ、夜明け前に綱を引き揚げます。傷つけないよう一尾ずつ丁寧に扱い、活きの良い状態のまま市場へ届けられます。
 1968年創業のかね八寿しを訪ねました。付け台(カウンター)では職人の軽快な手さばきが続き、地元客にも観光客にも人気です。注文したのは地物寿司と伊勢えびみそ汁。水槽から取り出した生きたままの伊勢えびを調理し始めます。
 運ばれてきた伊勢えび寿司は、まだ長いヒゲがゆっくりと動いています。一口頬張ると、ぷりぷりとした食感と上品な甘みが口いっぱいに広がり、地元いすみ産の米を使ったシャリとの相性も抜群です。みそ汁には伊勢えびの濃厚なだしが溶け込み、最後の一滴まで飲み干したくなるおいしさでした。他にもアワビや金目鯛など、御宿の海の豊かさをご賞味下さい。

一針一針に自分らしさを

 ハワイアンキルト・パッチワークを営む教室を訪ね、人と人の交流を大切にする町の文化にも出会いました。
 教室を開くのは、ハワイアンミュージックが流れるカフェレストランHula-Hanaを営む桑原晴子さん。10年前にお店で始めた教室は、町の文化祭に作品を展示したことをきっかけに、現在は月2回、公民館で活動しています。町内外から通う参加者に加え、観光客も気軽に体験できます。
 ハワイアンキルトは、ヤシの木やハイビスカスなど自然をモチーフにした左右対称のデザインと、波紋のように何重にも囲むキルティングを施すのが特徴の伝統的な手芸。一針一針、丁寧に縫い合わせると、自分だけの作品が出来上がります。
 「布の色の組み合わせで、まったく違う作品になります。みんな好きな色を選ぶから、その人らしさが出ますよ」と桑原さん。参加者も「布を選ぶ時間が楽しい」「完成を想像するとワクワクする」と笑顔を見せます。
 完成までには数カ月、時には一年以上かかることもあります。それでも毎日少しずつ縫い進める時間が、作品だけでなく心まで温かくしてくれるようでした。

海とともに生きた海女たち

 最後にご紹介するのは、町に受け継がれてきた海女文化です。御宿は三重県志摩地方、石川県舳倉島と並ぶ日本三大海女地帯の一つ。古くから女性たちは素潜りでアワビやサザエ、ワカメなどを採り、海とともに暮らしてきました。400人いた海女で残っている人はいませんが、当時の生き生きとした姿や精神は大切に語り継がれています。
 地元の岩瀬酒造には、戦前から海女を撮影し続けた先代・岩瀬禎之氏による写真ギャラリー海女の群像があります。モノクロ写真に映る海女たちの真っ直ぐな眼差しや引き締まった身体は、水面にきらめく太陽の光のように眩しく、力強い美しさを感じます。厳しい自然と向き合って生きてきた女性たちの記録に、心を鷲掴みにされてしまいました。
 童謡の世界そのままのような海岸の景色、白い砂浜に響く波音、助け合いの心と豊かな海の恵み。ゆっくりと御宿町を歩いてみてください。 

■次回は青森県十和田市です。

まちのデータ

人口
6624人(6月30日現在)
おすすめの特産品
外房イセエビ、外房あわび、外房つりきんめ鯛
アクセス
東京駅から御宿駅まで特急わかしおで約1時間25分。車は圏央道市原鶴舞ICや京葉道路茂原長南ICからそれぞれ約40分
問い合わせ
御宿町観光協会
0470-68-2414

いつでも元気 2026.9 No.418