青の森 緑の海
息子の海

素潜り漁に向かう息子=2025年11月、沖縄県北谷町
息子が小学6年生になり、日々成長している。この連載に登場した多くの撮影現場で、彼は僕の隣にいた。
5年生の時はいじめで不登校になったが、その頃から好きで続けていることがある。素潜り漁だ。親が頻繁に海へ連れていく影響もあるかもしれない。根っからの〝自然児〟というわけでもなく、放っておけばひたすらパソコンでバトル系ゲームをしている彼にとって、漁とはどんな世界なのだろう。
普段は料理の手伝いはあまりしないのに、自分が獲ってきた獲物は言われなくても包丁を研ぎ、内臓やウロコを取る面倒な作業を黙々とこなす。それに水中での彼はかなりワイルドだ。
北谷の海で潜っていたある日のこと。2mクラスの巨大ウツボが岩礁から顔を出していた。ウツボは銛が刺さっても蛇のように絡みつき、怪力で銛をへし折ってしまう。
それを知っていた僕は息子に「ウツボがいるよ」と、ただ教えたつもりだった。だが彼は次の瞬間、猛ダッシュで水深4mへと一気に潜り、思い切り銛を打ち込んだ。銛に付けたゴムが手首に絡むと、ウツボに海底まで引きずりこまれる。僕は慌てて追いかけたが、彼の動物的な反応には驚いた。
もしかすると、ゲームと狩猟は本質的に共通する部分があるのかもしれない。本人に聞くと「素潜り漁は楽しいよ」と、拍子抜けするような答えしか返ってこないけれど。
新世代は僕のような昭和生まれとは全く違う時代を生きている。彼らの可能性を信じて、本物だと思う体験をこれからも一緒にしていきたい。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。
いつでも元気 2026.10 No.419
