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いつでも元気

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まちのチカラ 青森県十和田市 渓流と蹄の音が聞こえる

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

銚子大滝は高さ7m、幅20mの奥入瀬渓流本流にかかる唯一の滝

銚子大滝は高さ7m、幅20mの奥入瀬渓流本流にかかる唯一の滝

青森県南部に位置する十和田市。
十和田湖から流れ出す奥入瀬渓流と、
馬産地の歴史から生まれた伝統工芸や桜流鏑馬。
鉄板でジュージューと焼く十和田バラ焼き。
自然と伝統に出会う旅へ出かけました。

 東北新幹線の八戸駅からレンタカーを走らせ、十和田市へ向かいました。市街地の駒街道には、軍馬の産地として栄えた十和田市らしく、馬のモニュメントや蹄鉄などがあちこちに見られます。十和田市現代美術館を中心にアート作品も点在し、歩くのが楽しい街です。

木漏れ日の青き調べ

 十和田を訪れたら外せないのが奥入瀬渓流。市街地から車で約45分、十和田湖畔の子ノ口から流れ出す奥入瀬川のうち、焼山までの約14㎞が奥入瀬渓流です。国の特別名勝及び天然記念物にも指定されています。
 渓流沿いに整備された遊歩道を、清らかな流れを間近に感じながら散策。岩間を縫うように清流が入り乱れる阿修羅の流れ、マイナスイオンの水しぶきが上がる銚子大滝など、千変万化の景観に目が奪われます。
 渓流の豊かな水量を支えているのが、上流にある十和田湖。青森と秋田の県境にまたがる火山活動で形成されたカルデラ湖です。巨大な天然のダムのような役割を果たし、安定した量の水を奥入瀬川へ送り出しています。

ぬくもりの履き心地

 地域の歴史と暮らしから生まれた十和田の伝統工芸のひとつ、きみがらスリッパを紹介します。 
 「きみ」とは青森の方言でトウモロコシのこと。かつて日本有数の馬産地として発展した十和田では、馬の飼料としてデントコーンが栽培されていました。廃棄されていた大量の皮を活用しようと、昭和20年代に農家の女性が作るようになったのが始まり。農閑期の貴重な収入源として受け継がれ、青森県の伝統工芸品にも指定されています。
 天日干ししたトウモロコシの皮を選別し、水で湿らせてから、草履を編むように芯縄に編み込んでいきます。「選別が一番難しい。でも、この真っ白い色に惹かれます」と手を動かすのは、十和田きみがらスリッパ生産組合の下山勝子さん。自然素材だけに、乾燥すると縮み方も違います。長年の経験と勘を頼りに、ひと編みひと編み力を込めます。
 熟練者でも一日に一足を仕上げるのが精一杯。手づくりだからこそ、形も色合いも一足ずつ違います。足を入れると軽く優しく包み、夏は涼しく冬は温か。近年はカラフルに染めた製品や、スリッパ以外の小物づくりにも挑戦しています。
 道の駅とわだ匠工房では、定期的に体験会や製作実演も行われています。先人の知恵に触れながら、自分だけの一足を作ってみるのも楽しみです。

女性が駆ける流鏑馬

 十和田の春を彩る桜流鏑馬。満開の桜並木を背景に、華やかな衣装をまとった女性騎手が馬を走らせ、次々と矢を放ちます。桜流鏑馬の立ち上げから中心となっている上村鮎子さんに会いに、十和田乗馬倶楽部を訪ねました。
 上村さんが乗馬を始めたのは自身の出産後。父親から「馬で地域を盛り上げたい」と女性だけの流鏑馬を提案されたことをきっかけに、全国を訪ねて技術を学びました。
 各地に伝わる流鏑馬は神事で女人禁制。伝統を踏まえつつ、現代に合わせて進化させることを大切にしてきました。その一つが衣装。伝統的な装束を研究し、振袖をリメイクして華やかさと動きやすさを兼ね備えた衣装を生み出しました。
 「馬は一生懸命な人間に応えてくれる」と上村さん。20年以上活動を続け、今では海外からも観客が訪れます。約100mの走路を馬で駆け抜けながら、3つの的に矢を放つ競技はわずか10数秒。速さや的中数だけでなく、馬と騎手が一体となった美しい動きも見どころです。

ジュージューと鉄板で

 牛バラ肉と大量の玉ねぎを、甘辛い醤油ベースのタレで鉄板焼きにするソウルフード十和田バラ焼き。「ご当地グルメでまちおこしの祭典!B―1グランプリ」で、2014年に市民団体「十和田バラ焼きゼミナール」がゴールドグランプリを受賞。2024年には文化庁の「100年フード」にも認定されました。お店ごとに独自のタレや提供スタイルがあり、バラ焼きのたれは土産物屋に必ず並ぶほどになりました。
 司 バラ焼き大衆食堂は屋台をルーツとしたテントスタイルです。出てきたのはまるで薔薇の花のように盛り付けられた肉のタワー。青森県産ニンニクやリンゴを使ったオリジナルのタレ「ベルサイユの薔華ったれ」を鉄板に入れ、玉ねぎが飴色になるまでじっくり焼きます。タレの名前は「バラ肉」と「ベルサイユのばら」を掛けた遊び心。甘い香りが立ち上がったら肉をからめ、火力を上げて水分を飛ばせば完成です。
 店では「ボンジュール!」の掛け声でお客さんを迎え、「ラビアンローズ!」と送り出します。「ラビアンローズ」はフランス語で「バラ色の人生を〜」。食べ終わる頃には、満腹で笑顔になってしまいます。
 訪れて感じたのは、「なんて気持ちのいい街なんだろう」ということ。水と緑の静寂と、馬産地の息吹に触れる十和田市へ出かけてみませんか。

■次回は福井県大野市です。

 

まちのデータ

人口
5万6061人(7月末現在)
おすすめの特産品
長ねぎ、長芋、にんにく、ごぼう
アクセス
東京駅から八戸駅まで東北新幹線で
約2時間45分。八戸駅から市街地までバスで約40分
問い合わせ
十和田奥入瀬観光機構 
0176-24-3006 

いつでも元気 2026.10 No.419