青の森 緑の海
100万年

2026年5月、沖縄県岡波島
皆さんは大昔を想像することはあるだろうか。100年前、500年前、1000年前…。人間の時間はせいぜいそのくらいだ。
沖縄にまた、クジラが帰ってくる。12〜3月頃、シベリアやアラスカの海から出産・子育てのためにやって来る。
クジラ類はもともと4本足で陸上を歩いていた。約5000万年前に馬や牛と分かれ、独自に進化してきたという。沖縄近辺には、いつ頃からいたのか。ヒントとなる化石に会いに行くことにした。
沖縄本島南部の無人島、岡波島にカヤックで渡った。糸満市街地の沖合1㎞にあるが、人は訪れないため、海中には折れていないエダサンゴの群落が広がる。数万年の歴史を持つ琉球石灰岩の景観は、まさに古代の様相だ。
写真手前、岩が等間隔に並んでいるように見えるのがクジラの化石だ。ゴツゴツとした脊椎も露わに、10mほどの巨体が横たわる。明治時代に沖縄の民族や言葉、自然などを記録した『球陽雜譚』(黒岩恒著)に、この化石の存在が記載され、1990年頃から世間に知られるようになった。
クジラが埋もれているのは約100万年前の地層。ヒトはまだ現生人類ではなく、石器を使う原人の時代。マンモスのいた氷河期で、生物が生き抜くには大変厳しい時代だった。クジラの体に触れていると、そんな時代を乗り越えて今も悠々と沖縄の海を泳ぐ姿を、尊敬せずにはいられない。
岡波島は那覇空港を離発着する旅客機のコース真下にある。100万年前の化石の上空を最新のジェット機が飛ぶ。過去と現在が混ざり合う、不思議な空間だった。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。
いつでも元気 2026.11 No.420
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