旗を掲げる
文・新井健治(編集部) 写真・野田雅也

高市政権に抗議する集会で最近、
実在しない団体の旗をよく目にする。
「全日本食パン30枚切り推進委員会」
「魚は骨しか残さない同盟」などなど。
なぜ、こんな名前なのか。
旗を掲げる人たちの思いを聞いた。
5月3日に東京であった憲法集会。青空に「王子様の青春は私が守る連合」の旗を掲げていたのは30代の女性。漫画『テニスの王子様』が大好きで、平和な社会で自分の趣味を満喫したいとの思いで駆け付けた。
「〝連合〟といっても、メンバーは私ひとり。こうした集会に参加すると労働組合や市民団体に〝動員〟された、と揶揄する人もいる。当てこすりにはシャレで対抗しようと思い、こんな旗を作りました」と話す。
「珍しいメダカいます」の旗を掲げたのは、都内のメーカー営業職の女性(40代)。「本当にメダカがいますか、と聞いてきた人もいます」とニッコリ。
「高市政権が大勝した2月の選挙結果に危機感を抱き、4月から始めました。絵本『スイミー』のように、私たち一人ひとりは小さいけれど、集まれば大きなうねりを作り出すことができる、との意味も込めています」と言う。
高市政権に抗議
架空団体の旗を持つのは30~40代の女性が多く、2月の衆院選の結果に危機感を強め、最近始めたことが共通する。団体の名称は各自で考え、個々に業者に発注して作るのも特徴だ。インターネットを見ると、2000円前後からオリジナルの旗を作れる。
政権に抗議する集会というと、〝怖い〟というイメージを持つ人もいる。架空団体旗は柔らかい表現で、参加への心理的ハードルを下げる新しいデモの文化として注目を集めている。
国会前でたびたび行われる集会にも、架空団体旗を掲げる人たちが目立つ。「全日本食パン30枚切り推進委員会」の旗を持つのは、アパレル販売員の女性。「特に意味はありません。権力に抗うには、意味のないことをやるのも大切」と言う。
10代から憲法に興味を持っていたが、忙しくて政治には無関心だった。最近の高市政権の政策をニュースで目にして「あまりにひどく、じっとしていられなくなった」と話す。
普通の暮らし守りたい
集会で目立つのは架空団体旗だけではない。オリジナルのプラカードや、映画「スターウォーズ」のダースベイダーなどデコレーションで自由に意志表示する。3つのプラカードをショッピングカートに付けて参加した30代女性は「このままでは戦争できる国になる。普通の暮らしを守りたい」と話す。
夜空にペンライトを掲げるのも特徴。これは韓国のペンライトデモが影響しており、アイドルのコンサート用グッズなどが活用されている。
新しいデモの文化は全国各地に広がる。以前は大きな集会の情報しか届かなかったが、ネットの「デモカレンダー」を見て、地元の駅頭などで行われる小さな集会に個人で参加する人も。今日もどこかで、自由を守る自由な集会が行われている。
いつでも元気 2026.11 No.420
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