MIN-IRENトピックス

2017年12月8日

【新連載】37.間質性肺炎を引き起こす薬剤(漢方薬を除く)

 漢方薬以外による間質性肺炎の副作用が過去5年間に48例報告されています。このうち23例が70歳代でした。
 被疑薬は、○ 抗リウマチ薬が全18例:メトトレキサート(リウマトレックス)13例のほか、オーラノフィン(リドーラ)、サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN)、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)など ○ 抗ガン剤が全10例:パクリタキセルアルブミン懸濁型(アブラキサン)、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、ゲムシタビン(ジェムザール)、5-FU、セツキシマブ(アービタックス)、パニツムマブ(ベクティビクス)など ○ 不整脈治療薬アミオダロン7例 ○ 消炎鎮痛解熱剤:セレコキシブ(セレコックス)、ロキソプロフェン(ロキソニン) ○ 抗生物質:セフトリアキソン(ロセフィン)、セフェピム(マキシピーム) ○ ペグインターフェロンなどであり、これまで間質性肺炎について指摘されていた薬剤が多くを占めていますが、抗凝固剤:ダビガトラン(プラザキサ)や、DPP-4阻害薬:ビルダグリプチン(エクア)、PPI:ランソプラゾール、インフルエンザワクチン、プレガバリン(リリカ)なども1例ずつ報告があり、多岐に渡っています。
 死亡例はアブラキサン、イリノテカン/パニツムマブ併用、インフルエンザワクチン、ランソプラゾールによる症例でした。
 抗がん剤による間質性肺炎発現までの期間は、PMDAの重篤副作用疾患別対応マニュアルによると「数週間から数年の慢性の経過で」とありますが、上記症例をみますと、10例中7例が3ヶ月以内の発現でした。ゲフィチニブによる報告はありませんでした。
 メトトレキサートについては、13例中8例が4ヵ月以内の発現でしたが、増量後の発現が多いことが特徴でした。
 DLST=リンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test)が陽性を示したのは、エクアとメトトレキサートが1例ずつ。間質性肺炎マーカーであるKL-6値の記載があったのは12例でした。

以下、民医連新聞記事を紹介します。

間質性肺炎を起こす薬剤に注意を~「息切れ」「咳」「発熱」症状を見落とさないよう

 「副作用モニター」に報告される重篤な副作用のひとつに、薬剤性間質性肺炎があります。2008年度から09年の上半期までに24件の報告が寄せられました。
 被疑薬として報告されたのは、パクリタキセル3件を含む抗がん剤関係が9件、抗不整脈用剤アミオダロンが3件、抗リウマチ剤のメトトレキサートが4件、 柴苓湯・柴胡桂枝乾姜湯など漢方製剤(小柴胡湯と同様「黄?」を含有)が2件、PIPCやSBT/ABPCなど抗生剤が3件、ほかインターフェロン製剤、 ランソプラゾール、被疑薬が特定できない症例が各1件でした。
 発症までの期間は、抗がん剤やメトトレキサートなどは数か月から数年後、抗生剤は数日後、漢方製剤は約1カ月程度、という差がみられました。抗癌剤では 2週間や6週間など早期の症例もあり予測は困難です。厚労省重篤副作用疾患別対応マニュアルでは、ゲフィチニブは2~4週間以内に見られることが多いとの記載があり、厳重な注意が必要です。
 アミオダロンについては15日後、約1年後、不明とバラツキがありました。
 発症機序には、(1)抗がん剤などの細胞毒性によるもの(数週間から数年で遅く発症する)、(2)アレルギー反応によるもの(1~2週間の早期に発症する)、があると考えられています。
 肺胞壁に炎症が起きている程度の初期では、原因薬剤の中止とステロイドパルス療法などの適切な治療で治まりますが、間質の繊維化が起こると肺胞が破壊され、治療が困難になるので、早期発見が不可欠です。
 まれに総合感冒剤などの市販の医薬品でもみられます。この副作用を引き起こす恐れのある薬剤を服用中の患者には、注意をうながす必要があります。「から 咳」、「発熱」などの症状が見られたり、坂や階段の昇降時や労作時の「息切れ」や「息苦しさ」が持続する場合も、早期に薬局・主治医に連絡・相談するよう 伝えておくことが大切です。

(民医連新聞 第1468号 2010年1月18日)

 アミオダロンについて、過去5年間の報告例をみますと、投与量は7例中6例が1日200mgであり、数週間での発現例もありましたが、3例は3年以上経過していました。メーカーのサイトでは、日本人では1日100mg~200mgの漫然投与で高率に肺合併症が起こると、注意喚起されています。 以下、2016年の民医連新聞記事を紹介します。

抗不整脈剤アミオダロンによる間質性肺炎

 抗不整脈剤アミオダロン(先発品名:アンカロン)は、二次救命処置ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)で扱う「基本的な薬剤」として位置づけられ、処方件数が増えている薬剤です。けれども、最終的には間質性肺炎や肺線維症などの肺障害を発症して死に至る可能性が高いため、毒薬に指定され、副作用被害救済制度の対象ではないという現状です。
 間質性肺炎は、肺胞の「間質」と呼ばれるスポンジ様の構造壁が炎症などで変性した結果、取り込んだ酸素を血液に受け渡す能力が低下し、呼吸困難になる疾患です。肺線維症は、病状が進行して間質にコラーゲンが沈着、肺の機能は不可逆的に障害を受けます。当モニターには、アミオダロン投与後に肺線維症を含む薬剤性肺炎を発症した症例が18例、間質性肺炎のマーカーのKL-6の上昇が1例報告されています。
 発症期間は、確認できた範囲で、2週、9週、5カ月2例、6カ月3例、9カ月2例、14カ月、38カ月、42カ月2例、でした。投与開始から半年以降に注意が必要ですが、たった2週間の投与でも発症しているので油断できません。血しょうからの消失半減期が19~53日と極めて長いにもかかわらず、アミオダロンの中止およびステロイド投与1~2週で軽快していることに加え、リンパ球幼若化試験(DLST)陽性例もあることから、発症の仕組みはアレルギーと同様に考えても矛盾はしないでしょう。
 薬剤の位置づけとしては、添付文書で「他の抗不整脈薬が無効か、または副作用により使用できない致死的不整脈患者にのみ使用すること」と警告されている、限られた患者向けの薬剤です。できるだけ入院中に危険性をていねいに説明し、同意を得てから投与することが必要です。投与中は間質性肺炎を見逃さないこと、また、発症した場合は速やかに免疫抑制剤による治療を開始するなど、慎重に使用して下さい。

(民医連新聞 第1621号 2016年6月6日)

■画像提供 山梨民医連
http://www.yamanashi-min.jp/2016_yakuzaishi-bosyu/HTML5/pc.html#/page/1

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**【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や352の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

<【薬の副作用から見える医療課題】掲載済み>

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  1.民医連の副作用モニターとは~患者に二度と同じ副作用を起こさないために~
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用
  11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
  12.点眼剤の副作用
  13.消化器系薬剤の様々な副作用
  14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
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  17.トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)の副作用について
  18.脂質異常症治療薬の副作用について
  19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
  20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用
  21.抗甲状腺ホルモン剤チアマゾールによる顆粒球減少症の重症例
  22.過活動膀胱治療薬の副作用
  23.産婦人科用剤の副作用
  24.輸液の副作用
  25.鉄剤の注意すべき副作用
  26.ヘパリン起因性血小板減少症
  27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用
  28.糖尿病用薬剤の副作用 その1
  29.糖尿病用薬剤の副作用 その2
  30.糖尿病用薬剤の副作用 その3
  31.抗リウマチ薬「DMARDs」の副作用
  32. ATP注の注意すべき副作用
  33. 抗がん剤の副作用
  34. アナフィラキシーと薬剤
  35.重篤な皮膚症状を引き起こす薬剤
  36.投注射部位の炎症等を引き起こす医薬品について

 

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