MIN-IRENトピックス

2017年12月6日

【新連載】36.投注射部位の炎症等を引き起こす医薬品について

ガベキサートメシル酸塩による重篤な静脈炎、皮膚潰瘍について

ガベキサートメシル酸塩(エフオーワイなど)、ナファモスタットメシル酸塩(フサンなど)

 ガベキサートメシル酸塩(エフオーワイなど)は、急性膵炎やDIC(汎発性血管内血液凝固症候群)に用いられますが、DICへの使用では投与量が多く、24時間持続点滴となるため、細胞毒性による静脈炎、硬結、皮膚潰瘍・壊死には特に注意が必要です。中心静脈投与が原則ですが、末梢血管から投与する場合の濃度として0.2%以下(本剤100mgあたり50ml以上の輸液)を徹底するよう、日本医療機能評価機構からも2009年と2013年に注意喚起されています。急性膵炎で使用する場合の濃度は、添付文書記載の用法では0.02%となります。

<症例> 60歳代女性 胃癌OPE後、胆嚢摘出も行ったため膵炎予防として本剤600mg/日投与。
4日目、末梢部位より点滴もれあり、中心静脈へ変更。 9日で投与は終了。
投与終了後8日目に手の腫脹、18日目に手甲に血管炎発現。26日目回復。
(希釈濃度は適正であった)

 この症例のように、投与中に症状がなくても、投与終了後数週間を経ての発現もあります。
また、注射速度が速い場合血圧低下の可能性があるため、毎時2.5mg/kg以下の速度が望ましいとされています。

 類薬で、透析時の血液凝固阻止の適応があるナファモスタットメシル酸塩(フサンなど)についても、DICへの使用で血管炎の報告がありました。この症例では添付文書指示では、1日量100mgを5%ブドウ糖1000mlへ希釈するところを、500mlでの希釈による投与でした。薬剤師は疑義照会後、病棟看護師に副作用の可能性について申し送りをしており、2日後血管炎が発現しましたが、直ちに中止し改善しています。

 この2品目について、全日本民医連へ報告されているその他副作用は、
 ①ガベキサートメシル酸塩:血小板減少症1例、薬疹4例
 ②ナファモスタットメシル酸塩:ショック2例、アナフィラキシー1例、アレルギー1例、薬剤性肝障害1例、好酸球増多1例、悪寒・嘔吐1例でした。

■画像提供 山梨民医連
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**【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や352の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

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  1.民医連の副作用モニターとは~患者に二度と同じ副作用を起こさないために~
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  28.糖尿病用薬剤の副作用 その1
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  31.抗リウマチ薬「DMARDs」の副作用
  32. ATP注の注意すべき副作用
  33. 抗がん剤の副作用
  34. アナフィラキシーと薬剤
  35.重篤な皮膚症状を引き起こす薬剤

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