MIN-IRENトピックス

2018年2月6日

【新連載】42.ニューキノロン系抗菌薬の副作用

レボフロキサシン水和物(クラビット) モキシフロキサシン塩酸塩(アベロックス)メシル酸ガレノキサシン水和物(ジェニナック)トスフロキサシントシル酸塩(オゼックス・トスキサシン)塩酸シプロキサシン(シプロキサシン・点滴静注)オフロキサシン(タリビット)パズフロキサシンメシル酸塩(パシル点滴静注・パズクロス点滴静注)

 過去5年間に当モニターに報告のあったニューキノロン系によるgrade2以上の副作用は90件でした。最も多い副作用は、アレルギー症状で50件です。内訳では、16件が服薬直後にアナフィラキシー症状(発赤・呼吸苦など)が出現しています。いずれも内服で生じており服用している年齢もばらついています。急激な症状の進展があるため、患者への事前指導が必要です。34件の発疹・皮疹の発現時期は、おおむね1週間以内に出現し当日から2日目が多くなっています。

 症例)7~12歳女性 肺炎疑いによりクラリスロマイシン投与するが陰影がやや増強したため、オゼックス顆粒小児用150mg1日2回処方。12時すぎに服薬。しばらくして突然の咳・鼻水・目のかゆみ・唇の腫れ・顔全体の腫れ、12:30に処方元に連絡し病院へ。途中で傾眠傾向・ひどい咳、12:50診察にて眼と口周囲の腫れ著明。肺は喘鳴なし、呼気性喘鳴なし。四肢に膨疹、臍周囲に圧痛、体幹皮膚に紅班。Bp92/70 HR100台、SpO2:93% 13時酸素吸入、ポララミン サクシゾン静注 15時状態おちつく。プレドニン20mg/日処方。オゼックスは中止。

 過去5年間に当モニターに報告のあったニューキノロン系によるgrade2以上の痙攣・幻覚・せん妄の副作用は、11件ありました。年齢別では60歳代1件70歳代1件80歳代8件90歳代1件であり高齢者に集中しています。

副作用モニター情報〈342〉 クラビット®(抗菌剤・レボフロキサシン)高用量1回服用の副作用

 レボフロキサシンはニューキノロン系(NQ)に属する抗菌剤です。NQは幅広い抗菌スペクトルをもちますが、近年その耐性化が深刻になっています。NQ は薬剤と菌が接する時間を長くするよりも、菌と接する薬剤の濃度を高くする方が、耐性菌の発生を抑え、殺菌作用が増強することがわかってきました。この理論に基づき1日1回高用量を処方する方法が一般化しています。一方、レボフロキサシンは腎排泄率が約80%で、腎機能が低下している患者では、半減期が大 幅に伸び、クレアチニンクリアランス(Ccr)20mL/分以下ではCcr80mL/分以上の約4倍で、血中濃度が長期間上がり続けるので注意が必要です。
 当副作用モニターには、本剤に関して、今年度32件の報告が寄せられました。高用量製剤の発売直後という時期でもあり、うち高用量1回投与による副作用 は15件でした。

 【症例1】40歳代女性。糖尿病、慢性腎不全で透析中の患者。腰の痛みでロキソプロフェンを服用中WBC16000、CRP25.4、CT所見から椎間板炎が疑われ、クラ ビット®500mg、CMZ1gを開始。1日目、肩のぴくつきが出現し、クラビットRを中止。4日目、肩から腕にかけてのぴくつき、口も回りづらくなり、 ろれつが不良に。5日目夜ごろから症状すっと消えていった。

 【症例2】50歳代男性。血清クレアチニン値0.96。2年前に脳出血を発症。リハビリ中に寒気があり外来受診。38度台の発熱あり、レボフロキサシンを処方された。帰宅 後1回分300mgを服用し、その30分後、頭部の右回旋と右共同偏視(眼球が右に寄る)に始まる全身けいれんが起きた。30秒~1分でけいれんは収まったが意識レベルが低下。救急搬入され、フェニトインで治療。2週間後に退院し外来フォローとなる。

 2症例ともに1回の服用でけいれんが出現しています。NQによるけいれんの発現は、血中濃度や中枢内濃度の異常な上昇による急性中毒症状と考えられ、NSAIDs(非ステロイド消炎鎮痛剤)との併用で増強されることが報告されています(厚労省重篤副作用疾患別対応マニュアル)。透析での除去率は 36.9%です。本剤はNQの中では、けいれんの副作用が起こりにくいとされていますが、患者の背景を考慮し、きめ細かく投与量を調節する必要があります。

(民医連新聞 第1487号 2010年11月1日)

副作用モニター情報〈298〉 クラビット錠®(合成抗菌剤) 高齢者に多い中枢神経系副作用

 レボフロキサシン「クラビット®」錠は、とても使用頻度が高く、当モニターにもよく副作用報告が寄せられます。2007年1月から2008年 6月までに22件の報告があり、うち14件がスティーブン・ジョンソン症候群を含む発疹などの過敏症でした。次いで中枢神経系の副作用が4例となっています。

 【症例1】80歳代女性。心不全と高尿酸血症で投薬を受けていたが、膀胱炎でクラビット錠1日量 2錠で5日分処方された。服用終了2日後に全身に蕁麻疹(じんましん)が出たのに加え、異常な言動が現れた。就職した孫に「学校に行ったの?」と聞いたり、もう働いていないのに「仕事に行かなきゃ」と言うなど、認知症が疑われた。

 【症例2】90歳代男性。心不全で投薬を受けていた。感冒様症状でクラビット100mg錠1日量3錠処方された。4日間、服薬を継続したが発熱が持続するため、家族がたまたま持っていたロキソプロフェン錠を1錠服用させた日の深夜、数秒間の間代性痙攣(かんたいせいけいれん)が起きた。

*   *

 80歳を超える高齢者では、腎機能が成人の1/3~1/2に低下しています。そのため、クラビット100mg錠の常用量は1日2~3錠ですが、1日1錠でも過量投与になる可能性があります。
 また、クラビット錠のようなニューキノロン類は、GABA抑制を阻害する作用をもつので、単独でも痙攣を起こすことがあります。症例2のようにニューキノロン類とNSAIDs(非ステロイド抗炎症剤)を併用すると痙攣の危険は高くなります。
 これらの症例は服用開始後数日で副作用が発現していることから、蓄積によるものと考えることができます。高齢者では、副作用の頻度が高いことを考慮し、副作用に気を配りましょう。

(民医連新聞 第1439号 2008年11月3日)

副作用モニター情報〈458〉 抗菌薬レボフロキサシンによるアキレス腱断裂

 抗菌薬レボフロキサシン(商品名:クラビット錠)について、本モニターではけいれんなど中枢神経症状について報告していました。今回は、アキレス腱障害に関する報告がありました。

 症例1)70歳代後半、透析中の患者。膀胱炎にて初回500mg処方で投与。6日目にアキレス腱の痛みを訴え、悪化したため入院。

 症例2)70歳代後半の患者。肺炎にて初回500mg投与。2日目に足首が酷い浮腫になり中止。

 FDA(米国食品医薬品局)は、レボフロキサシンを含むフルオロキノロン系抗菌薬について、アキレス腱や肩、手などの腱炎及び腱断裂の重篤症例が市販後継続的に報告されているとして、2008年に添付文書に警告として追記することを通告しました。日本では、09年のレボフロキサシン高用量製剤承認時に重大な副作用項目として注意喚起されましたが、用量依存性については明らかではないとされていました。
 しかし、厚労省(PMDA)への副作用集積状況をみると、腱断裂は05~09年で5例でしたが、高用量製剤発売後の10~15年には21例報告されていました。クラビット点滴静注での報告も1例ありました。
 腱障害が発現する仕組みは明確でないものの、「コラーゲン線維に対する毒性」と指摘されています。高リスク患者は、「60歳以上、ステロイド併用、腎不全、関節リウマチなどに伴う腱障害の既往のある患者」と言われています。PMDA報告例では、全26例中19例が60歳以上、11例がステロイド併用、4例が透析患者でした。本モニターの2症例は完全断裂には至らなかったケースでしたが、PMDAには投与終了数十日~数カ月後に腱断裂に至った例が報告されています。
 腱の疼痛、浮腫などの炎症徴候、筋肉内出血といった先行症状が現れた時点で、投与を中止する必要があります。

(民医連新聞 第1620号 2016年5月23日)

副作用モニター情報〈212〉 タリビッドおよびクラビット投与時の投与量チェック

 (症例1)80歳代女性。肺炎でタリビッド錠1錠×2/日開始。翌日から「私、何をしに来たのかわからない」「耳元でキャンキャン言っている」「夜に蛾みたいのが襲ってきて口の中に入ろうとしている」と幻覚・幻聴が出現。2日間服用し中止となった。

 (症例2)70歳代女性。透析患者。クラビット100㎎1錠を服用、服用2日目にせん妄が生じ、7日目にさらに強くなり中止。中止後4日で回復。

 投与腎機能低下時に生ずるニューキノロン系薬の副作用は、腎機能悪化、低血糖、複視、中枢神経症状(めまい、ふらつき、けいれん)など。
 今回の症例は、高齢かつ腎機能低下があり、服用早期に精神神経症状が現れました。両剤とも70~90%が未変化体のまま腎臓から排出されるため、腎機能 低下時には、生物学的半減期が延長、尿中排泄速度が減少します。また、透析患者にクラビットを投与する場合、蓄積性が問題なので100㎎/日の4日間の短期投与、その後継続が必要なら隔日投与する方法があります。
 腎機能低下により、副作用発生頻度が高まることが予測される薬剤では、クリアランスを予測し、腎機能に応じた用量確認で事前に副作用を回避することが重要です。直接クレアチニン値が判らない場合も、そのリスクを有する高齢者や透析患者等には、投与量の適切性をそのつど確認する必要があります。

(民医連新聞 第1344号 2004年11月15日)

 過去5年間に当モニターに報告のあったニューキノロン系によるgrade2以上の肝障害は9件、血小板減少・白血球減少などの副作用は、5件ありました。

副作用モニター情報〈256〉 パズフロキサシンの副作用情報

 今回、2社から発売されているパシル注Ⓡとパズクロス注Ⓡにおいて、低血糖症状と白血球減少症、肝障害の副作用が報告されました。

 〔症例1〕60歳代男性、縦隔膿瘍でチエナム注Rを投与していたが、高熱が続くためにパシル点滴静注液に変更した。500mgを1日2回投与開始した9日 目、白血球数(WBC)が1600まで低下し、血糖(BS)は35と低下した。この時点でパシルの副作用を疑い、投与を中止した。中止した3日後には、 WBCは6500、BSは219まで上昇した。他に原因と考えられる併用薬はなく、パシルによる可能性が高い。

 〔症例2〕60歳代男性、肺炎でPIPC点滴治療を開始。培養の結果、クラブシェラ・ニューモニエ(+)にてセフメタゾールに変更。しかし、WBC、CRP 値に改善がみられず、パズクロス注へ切り替えた。投与7日目に食欲不振や吐き気、だるさを訴え、検査データから薬剤性肝障害と診断された。
  薬剤中止後、絶食点滴利尿剤による治療で8日後に検査値は回復した。

*    *

  ニューキノロン剤ガチフロ錠Ⓡ(2008年9月販売中止)で警告されたキノロン系抗菌剤の低血糖作用は、経口血糖降下剤のスルフォニル尿素剤と類似した機序で血糖が低下すると推測されています。高齢者や腎機能が低下した人は症状が出やすいので、減量するなどの対応が必要です。
  薬剤性肝機能障害については、発売1年後に重篤な副作用が追記され、使用上の注意が改訂されました。その根拠になった症例は、投与開始3日で重篤な肝機能障害が起き、薬剤を中止した3日後に死亡するというものでした。
  投与後は、初期症状の観察や検査値のチェックを行い、副作用に注意しながら使用する必要があります。また医療安全委員会から発信された安全情報(№23 06年7月15日)でも提起されているように、耐性菌を発現させないよう適切に使用すべきです。https://www.min-iren.gr.jp/wp-content/uploads/2014/03/anzenjoho_023.pdf

(民医連新聞 第1391号 2006年11月6日)

 過去5年間に当モニターに報告のあったニューキノロン系によるgrade2以上の副作用として、腎障害4件、PT-INR上昇・血圧上昇・横紋筋融解各2件・偽膜性大腸炎・低Na血庄・血管炎・多発性関節炎・アキレス腱断裂が各1件ありました。

■画像提供 奈良民医連 一般社団法人奈良保健共同企画
http://www.aoba-pharmacy.com/

■副作用モニター情報履歴一覧
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■薬学生の部屋
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**【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や352の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

<【薬の副作用から見える医療課題】掲載済み>
  1.民医連の副作用モニターとは~患者に二度と同じ副作用を起こさないために~
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用
  11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
  12.点眼剤の副作用
  13.消化器系薬剤の様々な副作用
  14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
  15.抗不整脈薬の副作用
  16.降圧剤の副作用の注意点
  17.トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)の副作用について
  18.脂質異常症治療薬の副作用について
  19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
  20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用
  21.抗甲状腺ホルモン剤チアマゾールによる顆粒球減少症の重症例
  22.過活動膀胱治療薬の副作用
  23.産婦人科用剤の副作用
  24.輸液の副作用
  25.鉄剤の注意すべき副作用
  26.ヘパリン起因性血小板減少症
  27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用
  28.糖尿病用薬剤の副作用 その1
  29.糖尿病用薬剤の副作用 その2
  30.糖尿病用薬剤の副作用 その3
  31.抗リウマチ薬「DMARDs」の副作用
  32. ATP注の注意すべき副作用
  33. 抗がん剤の副作用
  34. 医薬品によるアナフィラキシー
  35.重篤な皮膚症状を引き起こす薬剤
  36.投注射部位の炎症等を引き起こす医薬品について
  37.間質性肺炎を引き起こす薬剤(漢方薬を除く)
  38.漢方薬の副作用
  39.抗生物質による副作用のまとめ
  40.抗結核治療剤の副作用
  41.抗インフルエンザ薬の副作用

■掲載過去履歴一覧
http://www.min-iren.gr.jp/?cat=28

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