MIN-IRENトピックス

2018年2月28日

【新連載】49.鎮咳去痰剤による注意すべき副作用

 今回、鎮咳去痰剤の過去5年間の副作用モニター報告272件について、あらためて概括してみました。被疑薬として10件以上よせられた製剤は、カルボシステイン(ムコダインなど)80件、デキストロメトルファン(メジコンなど)37件、ヒベンズ酸ピペチジン(アスベリンなど)36件、コデイン系製剤(配合剤含む)33件、アンブロキソール(ムコソルバンなど)29件、リン酸ベンプロペリン(フラベリックなど)19件、クロフェダノール塩酸塩(コルドリンなど)12件でした。
 発疹や掻痒感など過敏症が135件とほぼ半数を占めています。ついで、眠気やめまい、幻覚・興奮などの精神神経系の副作用が59件、便秘や悪心・嘔吐などの消化器系の副作用が40件ありました。


 鎮咳去痰剤は一般にかぜや呼吸器感染症に、複数処方され、総合感冒剤や抗生物質などとも併用されることが多く、副作用の被疑薬も複数となり特定がむずかしい側面があります。投与期間も短いことからアレルギーによる副作用や、その薬理作用にもとづく軽微な副作用が多くを占めていました。

 カルボシステインやアンブロキソールなどの去痰剤は、発疹などの過敏症がほとんどで、デキストロメトロファンやヒベンズ酸ピペチジンなどの中枢性鎮咳剤では、発疹などの過敏症とともに眠気やめまい・ふらつき、幻覚・興奮などの精神神経系の副作用が報告され、リン酸コデインやリン酸ジヒドロコデインとその配合剤(抗ヒスタミン剤含有)では、便秘、口渇、など消化器系の副作用や尿閉などの副作用が報告されています。特異的な副作用として、リン酸ベンプロペリン(フラベリック)で聴覚異常(半音下がって聞こえる等)が12件報告されています[表]。

 重篤度がグレード3で報告された症例は6症例ありました。1)デキストロメトルファンとアンブロキソールおよびレボフロキサシンの併用での白血球減少、2)フスコデ配合錠による腸閉塞、3)カフコデN配合錠とアンブロキソールによるスティーブンスジョンソン症候群、4)フスコデ配合錠・総合感冒剤・ロキソプロフェン・トラネキサム酸によるアナフィラキシーショック、5)カルボシステインとセフカペンピボキシルでのアナフィラキシーショック、6)ヒベンズ酸チペピジンシロップとカルボシステインシロップでの無呼吸発作(ただし因果関係は不明として報告)です。フスコデ配合錠による腸閉塞以外の症例では、被疑薬が複数あり鎮咳剤の副作用と特定されてはおりません。

 注意すべき副作用として、フスコデ配合錠による腸閉塞の事例を再掲します。また、リン酸コデインやリン酸ジヒドロコデインおよびその配合錠については、2017年7月に重篤な呼吸抑制のリスク回避のために、12歳未満の小児および18歳以下の肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は重篤な肺疾患の患者へは使用しないこととされました。今回調査したモニターには呼吸抑制の副作用名はありませんでしたが注意が必要です。

副作用モニター情報〈433〉 フスコデによる腸閉塞

 フスコデは咳止めとして用いられています。
 これまでに当モニターに報告されたフスコデの副作用をまとめると、最も多かったのが便秘で13例、排尿困難と尿閉が計13例、次いで、発疹と薬疹が計13例、めまい4例、動悸3例、以下、1~2例の副作用が続きました。重篤なものでは、腸閉塞が1例、今年度に報告されています。
 2000年頃までは総合感冒剤のPL配合顆粒やペレックス配合顆粒との併用で、尿閉や排尿困難、便秘などの副作用報告が多くみられましたが、最近は抗ヒスタミン剤の重複を避けるようになったためか、併用例での報告はなくなりました。

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 そこであらためて注意を喚起したいのが、腸管の蠕動(ぜんどう)運動を抑制する作用のあるジヒドロコデインが関与する便秘です。フスコデには、3種類の薬効成分が配合されています。錠剤では、ジヒドロコデインリン酸塩3mg、dl-メチルエフェドリン塩酸塩7mg、クロルフェニラミンマレイン酸塩1.5mgです。1日量の9錠なら、それぞれ27mg、63mg、12mgになります。
 今回報告された腸閉塞の症例は、開腹手術歴があるため、それによる腹膜癒着で腸閉塞を起こすリスクが高い患者でした。そうした危険があるにもかかわらず1日量である9錠を投与したことが、腸閉塞の引き金になったと考えられます。
 コデインを処方するときは酸化マグネシウムなどの下剤を併用するなどの工夫をしている場合がほとんどだと思いますが、この症例では併用されていませんでした。
 ジヒドロコデインはコデインよりも作用が強く、ジヒドロコデイン30mgの作用は、コデイン60mgと比べて配合量が少なくみえても眠気がやや弱いこと以外は、鎮咳、鎮痛、止(し)瀉(しゃ)作用について、大きな違いはないとされています。ジヒドロコデインは、処方せんがなくても購入できる咳止めに配合されている場合もあります。フスコデが便秘を起こしやすい成分の配合剤であることを認識しておきましょう。

(民医連新聞 第1592号 2015年3月16日)

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