MIN-IRENトピックス

2018年2月27日

【新連載】47.メトロニダゾールの副作用

  メトロニダゾール(商品名フラジール内服錠 アスゾール錠)

 メトロニダゾール注(商品名アネメトロ点滴静注)膣錠(フラジール膣錠) ゲル(ロゼックスゲル)
 メトロニダゾール内服製剤・膣剤の適応症は、細菌性膣症(2011年)内服製剤が嫌気性感染症・感染性腸炎(クロストリジウム・ディフィシル)・アメーバ赤痢・ランブル鞭毛虫感染症(2012年)ヘリコバクタ-・ピロリ感染胃炎(2013年)などの適応症が追加されています。また、内服製剤の使用が困難な場合として注射製剤が承認され(2014年)がん性皮膚潰瘍に伴う臭気の軽減を適応としてゲル製剤(2015年)が承認されています。
 3年間の副作用報告21例では、発疹10例(2日以内7例)下痢5例(2日以内4例)
嘔吐3例(1例は味覚異常も発生)足のしびれ1例、唇のしびれ1例(下痢も併発)肝機能障害1例、脳症2例(いずれも68日・157日の長期投与)となっています。
 ヘリコバクタ-・ピロリ感染胃炎での使用症例が増加しており、皮膚症状と消化器症状が増加しています。1週間投与の短期間投与のため、副作用と治療を見ながら投与の継続を判断しています。

副作用モニター情報〈432〉 メトロニダゾールによる中枢神経障害

 メトロニダゾールは、抗トリコモナス剤として1957年から使用されてきました。世界的には嫌気性菌治療剤としても使用され、日本でも2012年8月に「嫌気性菌感染症、感染性腸炎、アメーバ赤痢、ランブル鞭毛虫感染症」の「効能・効果」が追加承認されました。これにより、高用量で長期に使用される症例が増えてきました。

症例)70歳代 女性 体重33kg
 子宮留膿腫の診断でメトロニダゾール投与開始(他院のため開始時の投与量は不明)。
投与141日目 徐々に体重減少。嘔吐、嘔気出現し食事摂取困難。精査目的で入院。内服薬は紹介状記載のものを継続。電解質、血糖値、頭部CT、胃カメラ、腹部エコー、異常なし。メトロニダゾール錠は1000mg/日 分4で投与続行。
投与154日目 誤嚥性肺炎を疑いCTRX[セフェム系]点滴投与。
投与157日目 誤嚥リスクあり、中心静脈栄養管理となる。その後、MPEM[カルバペネム系]点滴に変更。炎症反応改善、解熱傾向のためMEPM中止、同時にメトロニダゾールも中止。
中止2日目 入院後、上肢の不随意運動、振戦が目立ちADL低下。CT画像では不随意運動の原因と考えられる所見なし。頭部MRI施行。
中止9日目 MRI画像(脳梁膨大部病変)より、メトロニダゾール脳症が考えられる。メトロニダゾールはすでに中止しており、経過観察となった。
中止15日目 不随意運動改善傾向。
中止37日目 右手の振戦が残る程度。
中止66日目 徐々に経口摂取量アップ。

 メトロニダゾールは、たん白結合率が低く、血中にとどまらず組織に移行します。また尿中排泄が遅延することから、組織にとどまり排泄しにくい薬剤と考えられます。
 脳にも移行するため、脳に器質的な異常がある患者は禁忌です。末梢神経障害、中枢神経障害等の副作用が現れることがあるので,特に10日を超えて長期に本剤を投与する場合や1500mg/日以上の高用量投与時には、副作用の発現に十分注意する、とされています(添付文書)。
 今回の症例は低体重であり、もとの投与量そのものが過量であった可能性があること、5カ月に及ぶ長期の投与、などが原因と考えられます。膿瘍を形成する場合は長期投与になる場合がありますが、神経症状の発現には十分注意し、MRIなどで病変の有無の確認が必要です。

(民医連新聞 第1591号 2015年3月2日)

副作用モニター情報〈306〉 メトロニダゾール錠による副作用について

昨年から今年にかけて、メトロニダゾール錠(フラジールⓇ、アスゾールⓇ)による副作用として、発疹2件、湿疹1件、出血性大腸炎1件の報告が寄せられています。

〔症例1〕20代・男性。潰瘍性大腸炎のATM療法(抗菌剤多剤併用の治験投与)で、メトロニ ダゾール、塩酸テトラサイクリン、アモキシシリンの内服開始。2日後から全身に発疹が現れ、服用を中止。その後、数日で発疹は軽くなった。その後の DLST(薬剤リンパ球刺激)試験により、アモキシシリンとメトロニダゾールが陽性を示した(約1年半前にも同一療法で発熱、湿疹あり)。

〔症例2〕40代・男性。下痢、下血あり、アメーバ赤痢陽性で、メトロニダゾール内服開始。2日目に腕、背中に湿疹が現れた。そのまま約10日間服用して下痢は治まり、その後は湿疹も改善。

 ほか1件は、ヘリコバクター・ピロリの除菌に用いて発疹と出血性大腸炎が疑われた例です。
 メトロニダゾールは抗原虫薬としてトリコモナス症のほか、2007年8月からヘリコバクター・ピロリ菌の2次除菌に適応が追加され、1次除菌不成功例にクラリスロマイシンに替えて使用されています。また、上記症例1と2のように、適応外使用として赤痢アメーバ症、潰瘍性大腸炎(治験段階)、クロストリジウム・デフィシル(Clostridium difficile infection:CDI)などの嫌気性菌感染症の治療にも応用されており、使用例が増加することが予想されます。
 こうした適応外疾患に対する高用量使用時の副作用として、けいれん、意識障害などの中枢神経系障害や急性膵炎などが添付文書へ記載されています。副作用発現には十分な注意が必要です。

(民医連新聞 第1448号 2009年3月16日)

■画像提供 奈良民医連 一般社団法人奈良保健共同企画
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 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や352の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

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