健康・病気・薬

2018年3月23日

【新連載】55.骨粗しょう症治療薬による副作用

ビスフォスフォネート関連顎骨壊死などの副作用

 骨粗しょう症治療薬は、以前は活性型ビタミンD製剤とカルシウム剤が一般的でしたが、現在の治療は変わっています。今回は、骨粗しょう症治療薬について特集します。

 現在、最も多く使われている骨粗しょう症治療薬が、ビスフォスフォネート系薬剤です。この系統の薬剤は、骨が溶出するのを防ぎ、弱っていくことを防止します。骨は、毎日作られたり溶けたりしていますが、骨粗しょう症の患者では、溶ける量が相対的に多くなるため、骨が弱っていきます。この系統の薬剤は、それを防止するのですが、弱点も存在します。「骨回転」時には、骨の硬さを保つカルシウム部分が作られますが、同時にそれ以外の部分(軟骨など)も作られています。この「骨回転」を止めてしまうので、ビスフォスフォネート関連顎骨壊死などの副作用が発現すると言われています。
 近年、1日1回製剤の使用は減少し、週に1回、年に1回など長期間効果の持続する製剤が増えてきました。特に、年に1回製剤(注射剤、超長期製剤)は、投与初期の血中濃度の上昇により、急性腎不全、間質性腎炎などの副作用発現が報告されています。添付文書の警告欄に記載されており、骨粗しょう症の治療薬として得られるものと副作用の対比に十分な注意が必要と考えられます。
以下は何度か特集されたビスフォスフォネート系薬剤の記事の内容です。

★副作用モニター情報〈250〉 ビスフォスフォネート製剤(骨粗しょう症治療剤)の副作用について

 2005年度にビスフォスフォネート製剤による副作用の報告が13件ありました(ボナロン7症例、ベネット3症例、フォサマック2症例、アクトネル1症例)。胃部不快感が4症例、腹部膨満感、胃痛が各2症例など、消化器症状の副作用が13症例(1件で複数症状含む)ありました。また、精神神経系の副作用 (めまい、ふらつき)が3症例、ほかに血痰、血圧低下が各1症例ありました。13症例のうち12症例は、中止後に回復しています。(1例は不明)。
 発現までの期間は、1カ月以内が9症例(うち3日以内が5症例)、1カ月以上が4症例です。

〔症例1〕ボナロン錠を服用後、13日目で口内炎ができた。舌が白くなり痛みもあり、胃部に不快感。ボナロンを中止すると症状は軽減。この症例では正しく服用されていた(*注)。
〔症例2〕ベネット錠を服用開始して、1カ月後より血痰。継続服用中は血痰が続いた。胸部レントゲンでは陰影なし。中止後、血痰はなくなった。服用法は守られていた(血痰の副作用は添付文書記載なし)。
〔症例3〕ベネット錠を服用開始してから、ふらつきが起き、夕方まで続いた。翌日に再服用すると同じ症状が出現。中止すると軽快し、その後ふらつきの訴えはなし。

 ビスフォスフォネート製剤は、服用方法が煩雑です。用法を守った場合でも、消化器症状、精神神経系の副作用が高い頻度で出現します。服薬指導と服薬後の症状観察が必要です。来院、来局時に疑わしい症状がないかを必ず確認してください。
 副作用は服用開始後、早期に出現する場合が多いですが、1カ月後でも発症した例があり、服用期間中は常に注意が必要です。
(*注)口内炎・食道炎・胃炎をさけるため、起床してすぐコップ1杯の水で服用する。噛んだり、口の中で溶かしたりせず、すぐに飲み込む。寝た姿勢で飲んではならず、服用後30分は横にならず、食事もさける。

(民医連新聞 第1385号 2006年8月7日)

★副作用モニター情報〈263〉 ビスフォスフォネート製剤(骨粗鬆症治療剤)の副作用

 2005年1月から2007年1月までにビスフォスフォネート製剤による副作用が98件報告されました。アレンドロ酸ナトリウム水和物(ボナロン・フォサマック)によるものが83件、リセドロン酸ナトリウム水和物(アクトネル・ベネット)によるものが15件で、その内、消化器系の副作用が74件で、全体 の76%を占めています。

〔症例1〕ボナロン服用21日目までは、胃痛などの症状はなかった(服用方法は遵守)。26日目ごろから胃部不快感があり、32日目に自己判断で中止。その後、症状は少しずつよくなった。
〔症例2〕ボナロンとアスパラCaを服用していた。13日目に口内炎ができ、胃腸の調子も悪化(服用方法は遵守)。服用20日目、口内炎は治らず、舌も白くなり痛み始める。ボナロン中止後、症状は次第に軽減した。

 上記の2例とも「起床後、すぐコップ1杯の水で、噛まず、溶かさず、すぐに飲み込む。服用後30分は横にならず、食事もさける」という服用方法を守っていても副作用が発現しました。メーカーによると、消化器系の副作用発現までの期間は「1週間以内」がもっとも多いといいますが、100日以上経過して発現した症例も報告されています。副作用のチェックは継続することが必要です。
 2006年11月にビスフォスフォネート製剤の重大な副作用として「顎骨壊死・顎骨骨髄炎」が追記されました。その症例のほとんどが抜歯などの歯科処置や局所感染に関連して発現しています。
 また、多発性骨髄腫や乳癌・前立腺癌の骨転移などによる高カルシウム血症に対して、静脈内投与された症例がほとんどです。
 しかし一方、骨粗鬆症に対する内服治療でも報告があります。骨粗鬆症治療の母集団から考えるときわめて稀な発症(国内では4例)ですが、重篤な副作用です。使用中に口腔内の異常(歯のゆるみ、歯が浮いた感じ、顎のしびれ・痛みなど)が現れた場合は、ただちに歯科、または口腔外科の受診をすすめることが重要です。

(民医連新聞 第1399号 2007年3月5日)

★副作用モニター情報〈290〉 ビスフォスフォネート系薬剤(骨粗しょう症治療薬)長期投与の副作用(顎骨壊死など)にあらためて注意を

 ビスフォスフォネート系薬剤の内服による顎骨壊死の副作用が報告されました。

〔症例〕80代女性。服用から症状発現までの期間は3年8カ月、合併症は高脂血症。
 2003年2月より、ダイドロネル錠(R)200mgを1錠(1回/日)、2週間の処方を3カ月ごとに継続服用。06年10月に歯科受診し、顎骨壊死疑いで口腔外科での検査をすすめられる。11月に口腔外科受診。右下6部歯肉歯槽粘膜に腫脹があり、その頭頂部に「ろう孔」があり排膿がみられ、X線写真で 同部の顎骨壊死と考えられる像がみられた。義歯は入れておらず外傷もないため、原因は明らかでない。ダイドロネルの休薬が可能か処方医に照会があり、整形 外科で同薬の処方が中止となる。その後、3カ月ごとに口腔外科で定期検査しているが未回復。

 ビスフォスフォネート系薬剤については、過去にも消化器症状や顎骨壊死に関する情報を発信してきました。
 顎骨壊死の副作用については、今年1月に日本口腔外科学会の監修で『ビスフォスフォネート系薬剤と顎骨壊死~理解を深めていただくために~』のパンフレットが作成され、各製造販売企業から現場に再度注意喚起が行われています。
 本症例は、極めてまれといわれる内服薬で起きていること。また、侵襲的歯科措置などのリスク因子もない症例であることに注意が必要です。
あらためて、本剤の使用中は口腔内の異常(歯のゆるみ、浮いた感じ、顎のしびれ・痛み)をモニターすること、症状が現れた場合は、ただちに歯科または口腔外科の受診をすすめることが重要です。
 また顎骨壊死のほか、本剤を使用して数カ月から数年後に、投与の一時中断や中止を必要とする重度の筋骨格痛が出現する可能性があるとの警告が、1月に米国FDA[アメリカ食品医薬品局、Food and Drug Administration]より出されています。

 日本でも広く臨床に使用されるようになって数年が経過し、長期に服用している患者数も増えています。長期投与に関連する副作用の発現に注意が必要です。

(民医連新聞 第1430号 2008年6月16日)

★副作用モニター情報〈419〉 ミノドロン酸50mg錠による痛みについて
 骨粗しょう症治療に用いられるビスフォスフォネート製剤である、ミノドロン酸50mg錠(monthly製剤=製品名:ボノテオ錠、リカルボン錠)による痛みの副作用報告が、過去1年間に3例ありました。

症例)70歳前半、女性 ミノドロン酸50mg錠を初回服用。翌日から倦怠感があり右肩が上がらず、2日後から全身の痛みが出現し、眠れなくなった。症状は少しずつ軽減し約20日後に回復した。

 経口ビスフォスフォネート製剤は服用方法が煩雑であることから、毎日服用のdaily製剤からweekly製剤(週に1回服薬)、あるいはmonthly製剤(月に1回服薬)へと、用量を増やし投与間隔を空ける工夫がされてきました。
 今回の症例のような全身倦怠感、関節痛、筋肉痛、発熱、骨痛などのインフルエンザ様症状は、窒素を含有する第2世代以降のビスフォスフォネート製剤で多くみられます。毎日服用する低用量製剤に比べ、高用量製剤では特に服用後3日以内の急性期症状が報告されています。
 ミノドロン酸については、市販後に「筋・骨格痛」が発現するケースが集積され、2012年6月には添付文書へ追記となりました。原因は未解明ですが、窒素含有のビスフォスフォネート製剤の作用の過程で、集積されるイソペンテニルピロリン酸という物質が、炎症性サイトカインの合成を促進し、筋・骨格系副作用に つながるのではないかとみられています。
 症状の多くは軽微で、2週間以内に回復することが多いようです。「2週間程度はdaily製剤を服用、その後weekly製剤かmonthly製剤へ変更することで防止できる」という報告もあります。
 しかし、今回のような一過性の急性期症状とは異なる重度の筋骨格系疼痛の症例も報告されており、昨年発売されたmonthlyの注射製剤であるイバンドロン酸ナトリウム(ボンビバ静注)では、承認時に製造販売後調査の必要性が指摘されています。

(民医連新聞 第1576号 2014年7月21日)

★副作用モニター情報〈428〉 ビスフォスフォネート系骨粗しょう症治療薬のインフルエンザ様症状・関節痛

 ビスフォスフォネート系骨粗しょう症治療薬について、インフルエンザ様症状、関節痛の副作用報告があったので紹介します。

症例)70代女性。ボナロン初回35mg。服薬翌日から発熱、腰痛が出現。ボナロン5mg連日投与に変更し、その後症状は改善したが、服用2カ月後に関節痛が出現。

 インフルエンザ様症状は急性期反応で、一過性の発熱、背部痛、倦怠感、関節痛などの症状が見られます。ほとんどは軽症で、継続して使用していても、症状はやがて消失します。発生頻度は月1回製剤>週1回>毎日投与、の順に多いと報告されています。破骨細胞内でメバロン酸代謝経路のイソペンテニル酸からファルネシルピロリン酸への合成経路を阻害し、イソペンテニルピロリン酸が増加することで急性期反応を引き起こすと考えられています。
 関節痛に関しては、2008年にFDA(アメリカ食品医薬品局)の通知「ビスフォスフォネート系薬剤:重度の筋骨格筋痛発現の可能性」で、ビスフォスフォネート 系薬剤を使用した後、場合によっては動作不能となる骨痛、関節痛や筋痛が生じる可能性がある、と指摘されています。重度の筋骨格痛は、ビスフォスフォネート系 薬剤の使用開始から数日、数カ月または数年以内に生じる可能性があり、薬剤の中止後、完全に消失した報告もあるが、不完全との報告もある、とされています。
 インフルエンザ様症状は、使用を継続した場合でも、数日以内に消失する傾向にあります。一方、筋骨格痛は疼痛や機能障害が持続し、鎮痛剤を必要とする ケースもあります。そのため、ビスフォスフォネート薬剤が原因の可能性がある場合は、一時的または完全な使用中止を検討すべきです。 

(民医連新聞 第1585号 2014年12月1日)

 ビスフォスフォネート系薬剤と違う作用機序で働く骨粗しょう症治療薬に、ラロキシフェン錠があります。この薬剤は女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン)と同様に作用して、骨のカルシウム分が血液に溶け出すのを防ぎます(骨吸収抑制作用)。女性の閉経後骨粗しょう症に第一選択されることが多くなりました。元々、エストロゲン製剤が骨粗しょう症に使われることが多かったのですが、血栓症という重大な副作用があるため、この薬剤が開発されました。
 使われることが多くなると、エストロゲン製剤とは違う副作用が目立つようになってきました。何回か特集をしていますので、ご覧ください。

★副作用モニター情報〈246〉 塩酸ラロキシフェン錠(エビスタ®錠)による霧視

〔症例1〕エストリオール(エストリールR錠)1㎎から本剤に変更。開始1カ月後に「目のかすみ」を訴える。エビスタR錠を中止し、眼科受診をすすめる。2カ月たっても目のかすみが続くと訴えあり。
〔症例2〕エビスタR錠を開始。1カ月後の受診時に「目のかすみ」を訴える。エビスタR錠を中止し、眼科受診を勧める。2カ月後も訴え続く。
〔症例3〕エビスタR錠を開始して1カ月後、調剤薬局に電話があり「目のかすみ」を訴える。医師に確認し、中止とする。その後訴えなし。
〔症例4〕エビスタR錠を投与開始後、1日で足にピリピリとした痛みと「目のかすみ」を訴え、中止となる。1カ月後の受診は、特に訴えなし。

 2004年4月に発売された本剤は、骨形成を阻外することなく骨吸収を抑制し、強力な骨量増加作用を有するとされています。さらにビスフォスフォネート系薬剤とは異なり、1日1回、いつ服用しても良いため、閉経後の女性の骨粗しょう症に投与されるケースが増加しています。
 一事業所から報告があったこれらの症例は、いずれも70代から80代の高齢者です。目のかすみなどは、薬剤によるものとは気づきにくい副作用だと思われます。急性視力障害は静脈血栓症の前駆症状としても注意が必要であり、迅速な対応が必要です。メーカー報告によれば、視力低下・霧視などの視力障害は、いずれも1カ月以内の早期に出現し、投与を中止すべきとされています。本剤が開始となった患者様には、「目のかすみ」の症状に注意し、出現したらすぐ連絡する よう伝えるとともに、開始から少なくとも2カ月間は、受診時には毎回、「目のかすみ」について、必ず問いかけることが大事です。

(民医連新聞 第1381号 2006年6月5日)

★副作用モニター情報〈283〉 骨粗しょう症治療剤(エビスタ錠)の副作用

 骨粗しょう症治療剤ラロキシフェン(エビスタ錠®)は、抗乳がん剤タモキシフェンや排卵誘発剤クロミフェンに類似した薬物群に属します。
 その副作用報告が多数寄せられています。骨粗しょう症に対するホルモン補充療法が血栓症の危険を高めるという理由で、積極的に行われなくなったことを背景に、ラロキシフェンの使用量が増加していることと関係しているようです。
 副作用モニターに寄せられた報告は、2005年から合計で33件になりました。
 前回の報告には、視力低下や霧視などの視覚障害があったので、注意を喚起しました。
 今回の報告では、それらに加え、肺塞栓、浮腫や体重増加、動悸などの循環器系症状、胃痛や吐き気などの消化器症状、頭痛、手足のしびれなどの神経系、発疹が見られました。
 このように、ラロキシフェンの副作用報告は多様です。
 メイラーの副作用大事典には「タモキシフェンの急性の副作用はエストロゲンに伴う副作用で(中略)反射性混濁を伴う網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、角膜症などを含む、いくつかの目の合併症、両視神経炎の報告がある」と記載されています。
 ラロキシフェンは、タモキシフェンに比べ、血栓症のリスクは低いとされていますが、報告の中に肺塞栓症の報告が見られるように、血栓症の副作用の危険は 存在します。そのほかの副作用も類似していると予測できます。
 婦人科や整形外科で処方される機会が多いと思いますが、内科や眼科領域のフォローも忘れないようにしましょう。間違っても男性に処方しないよう注意を願います。

(民医連新聞 第1422号 2008年2月18日)

 最後は、6ヶ月に1回注射を行うことで骨粗しょう症を治療する薬としてデノスマブ(商品名:プラリア)についてです。この薬剤が作用する標的は骨が溶け出す過程に関与するRANKリガンド(RANKL)と呼ばれる受容体であり、この受容体を阻害することによって骨粗しょう症を治療します。
 低カルシウム血症の副作用が多いため、それを防止するために、沈降炭酸カルシウム/コレカルシフェロール(天然型ビタミンD)/炭酸マグネシウム配合錠が同じ製薬会社から発売されました。

★副作用モニター情報〈453〉 骨粗しょう症治療薬デノスマブ(遺伝子組み換え)による顎骨壊死

 2013年、骨粗しょう症治療薬のヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤デノスマブ(商品名:プラリア皮下注60mgシリンジ)が発売されました。成人の用法・用量は「6カ月に1回、60mgを皮下注射」です。
 人間の骨は、壊されたり、新しく作られたりを毎日繰り返しながら、最終的に必要な骨量を保っています(骨回転)。しかし、加齢によって作られる骨の量が減っていくと、壊される骨の量の方が相対的に多くなるため、骨はいわばスカスカの状態になっていきます。これが骨粗しょう症です。
 デノスマブは、骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを弱め、骨粗しょう症を改善します。今回、この薬剤による副作用で顎骨壊死の症例が報告されました。

症例)60代女性。デノスマブ投与11カ月後に、歯茎の腫れが気になり始めた。口腔外科を受診したところ、顎骨骨髄炎による顎骨壊死と診断。その後、口腔外科で外科手術を行い、抗生剤投与などをされた。その後、デノスマブの投与は中止し、他剤に変更。

 これまで、当モニターでビスフォスフォネート系薬剤による顎骨壊死は何度かとりあげてきました。デノスマブは、ビスフォスフォネート系薬剤とは違う働きをしますが、結果的には骨を壊す働きを弱めるため、骨回転に影響し、副作用が出るとみられています。そのため、顎骨壊死には十分な注意が必要です。
 また、顎骨壊死は、悪性腫瘍、化学療法、コルチコステロイド治療、放射線療法、歯科処置の既往、口腔状態が不衛生であるなどの要因で発症頻度が高くなると言われています。顎骨壊死を防ぐためには、デノスマブの投与前に患者に適切な歯科検査を受けてもらい、抜歯など侵襲的な歯科処置は済ませておくことが大切です。

(民医連新聞 第1614号 2016年2月15日)

★副作用モニター情報〈398〉 エルデカルシトールによる高カルシウム血症

 エルデカルシトール(商品名:エディロールカプセル)は、活性型ビタミンD3誘導体です。ビタミンD3は、腸管でのカルシウムやリンの吸収を促進 させる作用があり、カルシウム代謝調節作用、骨代謝調節作用、副甲状腺ホルモン分泌抑制作用及び細胞分化誘導作用などの生理作用を有しています。骨粗しょう症の薬物治療ガイドラインでは、活性型ビタミンD3製剤の中でも本薬のみが、骨密度増加、椎体骨折予防の点から強く推奨されています。しかし、本薬は日本のみの限定販売で、いわゆるローカルドラッグです。今後も海外での販売は予定されていません。
 臨床試験においては、既存の活性型ビタミンD3製剤(アルファカルシドール)と比較して、骨密度の優位な増加、骨折率の低下が特徴とされています。本薬の治療用量の0.75μgは、アルファカルシドール1μgに相当します。半減期の長さ約49時間(アルファカルシドールは約17時間)による、血中カルシウムの持続的な上昇が影響していると考えられます。他にも要因はあるとは思われますが、このことは高カルシウム血症のリスクのひとつと考えていいでしょ う。さらに、カルシウム値が高値になった場合は、本薬を減量することとされていますが、0.5μgでの有用性のエビデンスはありません。
 過去1年間で、民医連副作用モニターに寄せられた本薬による高カルシウム血症は3件。そのうち2件は、他の活性型ビタミンD3製剤からの切り替えによる症例です。
 この1年間の高カルシウム血症の報告数は少ないですが、切り替えの際にも、やはり軽視できません。初期投与に対しては言うまでもありませんが、投与中は 血清カルシウム値を定期的(3~6カ月に1回程度)に測定すること。特に、処方対象者が多い高齢者では腎機能が低下している場合も多いため、高カルシウム 血症の発現リスクも高いと考えられます。高カルシウム血症に関連する症状(倦怠感、いらいら感、嘔気、口渇感等)の発現に注意してください。

(民医連新聞 第1552号 2013年7月15日)

画像提供 京都民医連 一般社団法人メディカプラン京都
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**【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約640の医療機関や354の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

<【薬の副作用から見える医療課題】バックナンバ->
  1.民医連の副作用モニターとは~患者に二度と同じ副作用を起こさないために~
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用
  11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
  12.点眼剤の副作用
  13.消化器系薬剤の様々な副作用
  14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
  15.抗不整脈薬の副作用
  16.降圧剤の副作用の注意点
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  18.脂質異常症治療薬の副作用について
  19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
  20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用
  21.抗甲状腺ホルモン剤チアマゾールによる顆粒球減少症の重症例
  22.過活動膀胱治療薬の副作用
  23.産婦人科用剤の副作用
  24.輸液の副作用
  25.鉄剤の注意すべき副作用
  26.ヘパリン起因性血小板減少症
  27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用
  28.糖尿病用薬剤の副作用 その1
  29.糖尿病用薬剤の副作用 その2
  30.糖尿病用薬剤の副作用 その3
  31.抗リウマチ薬「DMARDs」の副作用
  32. ATP注の注意すべき副作用
  33. 抗がん剤の副作用
  34. アナフィラキシーと薬剤
  35.重篤な皮膚症状を引き起こす薬剤
  36.投注射部位の炎症等を引き起こす医薬品について
  37.間質性肺炎を引き起こす薬剤(漢方薬を除く)
  38.漢方薬の副作用
  39.抗生物質による副作用のまとめ
  40.抗結核治療剤の副作用
  41.抗インフルエンザ薬の副作用
  42.ニューキノロン系抗菌薬の副作用
  43.水痘ヘルペスウイルス・帯状疱疹ウイルス治療剤の副作用
  44.薬剤性肝障害の鑑別
  45.ST合剤の使用をめぐる問題点
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  47.メトロニダゾールの副作用
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  49.鎮咳去痰剤による注意すべき副作用
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