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【新連載】51.市販薬(一般用医薬品)の副作用

2025年11月改訂

ベンザブロック、バファリンA、ナイシトールL(防風通聖散エキス)、水虫治療剤(ぬり薬名称不明)、パブロン、アスミン鼻炎薬、小児用ジキニンシロップ、新ジキニン顆粒、大正漢方胃腸薬など

 一般用医薬品は、要指導薬(スイッチ直後の医薬品・劇薬)をのぞいて、インターネットでの販売が解禁されたほか、医療用医薬品のスイッチOTC(Over The Counter:オーバー・ザ・カウンター)化も進められており、その安全性の確保は今後ますます重要な課題となっています。

 一般用医薬品による副作用については、厚生労働省から、医薬品医療機器安全性情報No.293(2012年8月)

 で、2007年度から2011年度の5年間に、製造販売業者から報告された1220例の症例についてのまとめが発表されています。それによれば、薬効分類上の副作用報告症例数は、総合感冒剤(かぜ薬)404例、解熱鎮痛消炎剤243例、漢方製剤132例の順となっており、そのうち重篤な症例として、死亡症例が合計24例、後遺症がのこった症例が15例あったことが報告されています。一般用医薬品といえども重篤な副作用があることに注意が必要です。

  今回、民医連の副作用モニター過去5年間の症例の調査では、重篤度がグレード2以上の副作用には、以下のようなものがありました。ベンザブロックによる尿閉(グレード2)、バファリンAによる肝障害(グレード3)2件、同バファリンAによる多形紅斑(G2)と、幻視(G2)が各1件ずつ、ナイシトールL(防風通聖散エキス)による急性肝炎(G3)、水虫治療剤(ぬり薬名称不明)全身発疹(G2)、パブロンによる全身発疹(G2)、アスミン鼻炎薬による湿疹・呼吸苦(G2)、小児用ジキニンシロップによる喘息発作(G2)、新ジキニン顆粒による薬剤性肝障害(G3)、大正漢方胃腸薬による薬剤性肝障害(G3)、などです。

 下記に、民医連新聞に掲載された過去の注意喚起事例を再掲します。なお、ナイシトール85の事例は、上記ナイシトールL(現在は市販されていない)とは別の症例です。

副作用モニター情報〈418〉 一般用医薬品の重篤な副作用

 今回、一般用医薬品による副作用症例が報告されたので紹介します。なお、2014年6月12日に「改正」薬事法が施行され、一般用医薬品のインターネット販売が一部(スイッチ直後の医薬品と劇薬)を除き解禁となりました。今後、安全面での不安があります。

症例1)風邪薬(薬品名不明)で急性緑内障発作 60代男性 基礎疾患なし
 市販の風邪薬服用後、左眼の充血・視力低下、3日後に眼科受診。左眼の眼圧上昇(眼圧38)、視力低下(測定不能)で急性緑内障発作と診断。レーザー虹 彩切除術(LIT)実施。ベタメタゾン点眼、カルテオロール塩酸塩点眼開始。6日後、右眼も隅角狭く予防的にLITを行う。
 約3週間後、左眼眼圧40、視力0.5。濃グリセリン・果糖注、アセタゾラミド注点滴静注。ビマトプロスト点眼、カルテオロール塩酸塩点眼、ベタメタゾ ン点眼、アセタゾラミド錠・L-アスパラギン酸カリウム内服投与。慢性化の可能性があり、大学病院へ紹介。2日後、大学病院にて緊急OPE(PEA- IOL-GSL施行)。ベタメタゾン点眼、レボフロキサシン点眼、ジクロフェナク点眼、ピロカルピン点眼投与。約4週間後、眼圧右:11、左:13で角膜 の透明性もあり安定。月1回の通院にて問題なし。緑内障指摘は今回が初めてだった。

症例2)バファリンAの多形紅斑型皮疹、肝障害、結膜炎。60代女性(HBV、HCV:陰性)
 38.6度の発熱、倦怠感にて市販のバファリンA(アセチルサリチル酸330mg、合成ヒドロタルサイト110mg配合)を3回内服して中止。服用中止 後2日目、全身に発疹・黄疸を認め、中止後3日目に受診。肝機能障害認める。中止後4日目に入院を勧めるも拒否(AST:249、ALT:344、 LDH:335、ALP:2117、γ-GTP:641、T-Bill:3.51)。中止後5日目に眼科・皮膚科受診。結膜炎に対しレボフロキサシン点 眼、フルオロメトロン点眼、皮疹にジフロラゾン酢酸エステル軟膏と白色ワセリン混合(躯幹四肢)、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル軟膏(顔、 首)、白色ワセリン(商品名:プロペト)(唇)、オロパタジン5mg2T分2を処方。
 中止後6日目、右網膜の出血が認められ、黄疸・肝機能が悪化し入院。皮膚生検したところ、多形紅斑型皮疹の疑い。中止後9日目、DLST陰性。 PSL30mg/日、ファモチジン20mg2T分2開始。中止後12日目、PSL50mg/日へ増量。肝生検を施行し、薬剤性胆汁うっ滞型肝障害の疑い。 PSLを漸減しながら、中止後21日目に退院。約1カ月後、黄疸、肝機能は改善傾向。PSLをさらに漸減し、その1ヶ月半後、PSLは終了。医薬品副作用 被害救済制度支給対象となった。

市販薬でも「救済制度」の対象になる

 一般用医薬品でも、適正に使用し、入院を必要とするレベルと同程度の重篤な副作用が発生した場合、医薬品副作用被害救済制度の対象となることを確認してほしい。

(民医連新聞 第1575号 2014年7月7日)

副作用モニター情報〈338〉 市販薬ナイシトール85(=防風通聖散)による肝障害

 【症例】60代女性。脂質異常症、骨粗鬆症で、ブラバスタチン、アクトネルを2年ほど処方され、サプリメント としてビタミンC、コラーゲンを7~8年服用している患者。市販薬のナイシトール85を3カ月ほど内服したところ、AST352、LDH340に上昇。薬 剤性肝障害が疑われ全薬剤中止となった。中止後、ASTは改善し、3カ月後にブラバスタチン、アクトネルを再開した。

 ナイシトール85は、テレビのCMなどで腹部の皮下脂肪の燃焼・分解をうたい、売り上げを伸ばしています。その成分は医療用漢方薬の「防風通聖散」と同一で、1日量(12錠)と防風通聖散エキス顆粒2.5g(1包)がほぼ同量です。
 防風通聖散には、黄芩(おうごん)のほか、甘草、大黄、麻黄などが配合され、これらの成分は注意が必要な生薬です。重大な副作用に肝機能障害・黄疸、間質性肺炎があります。
 全日本民医連の副作用モニターには、医療用「防風通聖散」を被疑薬とする報告が10件登録されており、そのうち肝障害・肝機能異常が5件と、半数を占めています。そのほか、下痢が3件、発疹と低カリウム血症が各1件でした。厚労省の重篤副作用疾患対応マニュアルには、漢方薬による薬剤性肝障害について 「一般に、発症までの期間は1カ月以内が44%、3カ月以上が29%と、やや長い症例がある。初発症状は、黄疸、全身倦怠感、腹部症状などであるが、アレルギー症状や白血球・好酸球の増多を伴う者は少ない」と記載されています。
 「メタボブーム」の中で、関連する薬効をうたった薬剤の使用者数が、医療用・市販薬ともに増加しています。とくに、漢方製剤の市販薬は「第2類」に分類 され、登録販売者のいる店舗であればどこでも手に入るうえ、30種類を超える商品があります。中には、名称が「ナイシトール85」のように、「防風通聖散」とすぐにわからないものもあります。
 服用薬の確認をする際には、注意して聞き取ることが必要です。

(民医連新聞 第1483号 2010年9月6日)

副作用モニター情報〈576〉 ジンマート錠(OTC薬)によるアナフィラキシー

 抗ヒスタミン剤だからといって、過敏症を起こさないわけではありません。

症例)40代女性。併用薬なし。
1日目:朝、右腕に蜂と思われる虫刺され1カ所、倦怠感あり。朝食前に全身にじん麻疹がひろがっていた。13時頃ジンマート錠R(メキタジン2mg、他3成分)を内服。19時頃、全身にじん麻疹と呼吸苦出現。20時頃に38度台の発熱あり受診。ジンマート錠2回目を服用したかは不明。アナフィラキシーの診断で、クロルフェニラミン注5mg、ヒドロコルチゾン注300mg、エピネフリン0.3mg筋注にて治療。血圧97/77
2日目:まだ浮腫性紅斑が残存、午後に咽頭の違和感出現。プレドニゾロン30mg/日、オロパタジン錠20mg/日で入院治療開始。血圧141/85
4日目:じん麻疹は一部改善したが、新たな出現を確認。呼吸困難感も出現。エピネフリン0.3mg筋注。血圧95/80
7日目:じん麻疹消失。9日目からプレドニゾロン減量となり、17日目治療終了。血圧147/92
 後日、DLSTを実施、ジンマート錠で擬陽性、ゼスラン錠でDLST陽性。特異的IgE抗体測定では、蛾とゴキブリで陽性、ミツバチ、アシナガバチ、スズメバチで陰性。

* * *

 被疑薬とされたメキタジンは、β相の血中半減期が3mgの服用で32.7時間なので、1回の服用で4日間も症状が続いたのでしょう。接触皮膚炎診療ガイドライン2020の「湿疹型薬疹の原因薬として報告されている医薬品」には、メキタジンが載っています。
 当モニターに寄せられた報告には、抗ヒスタミン剤でDLST陽性が確認された症例は、オロパタジンで1例ありました。また、クロルフェニラミンも含む4剤を服用し、他の3剤でDLSTを測定したものの陰性だった症例ではクロルフェニラミンが原因だった可能性も排除できません。
 過敏症治療に用いられる抗ヒスタミン剤なら過敏症はない、という先入観にとらわれないように気をつけましょう。

(民医連新聞 第1763号 2022年7月4日)      

 

副作用モニター情報〈645〉 OTC類似薬の副作用(上)

 現在、保険給付からの除外を政府が検討していることで注目されているOTC類似薬ですが、決して副作用の少ない安全な薬ばかりではないということを念頭に置かなければなりません。
 ガスター10がスイッチOTC(医療用と同じ成分を同じ量配合された薬)として発売されたのが1997年、今から28年前です。その後多くの薬が医療用から市販薬にスイッチされ、発売されてきました。ロキソニンSは「劇薬」を解除して発売しています。最近ではPPI(パリエット(R)など)がターゲットです。
 OTC類似薬を保険給付から外す、または選定療養費へ移行するということは、患者負担も大きくなるだけでなく、副作用も患者自身が責任を持つことになります。
 今回は、これらスイッチOTC薬と同じ医療用医薬品の当モニターに上がってきた副作用を報告します。(2020年4月~2025年3月)

〈重篤例〉
*ロキソプロフェン:発疹、消化管出血、急性腎不全、アナフィラキシー
*アセトアミノフェン:発疹、肝障害、消化管出血、呼吸困難
*芍薬甘草湯:血圧上昇、低カリウム血症、間質性肺炎
*酸化マグネシウム:高マグネシウム血症、不整脈、意識障害
*抑肝散:低K血症、心不全急性増悪
*メジコン:アナフィラキシー

 重篤にならずに済んだ症例も、医療機関が副作用と気付いて中止しているからです。発見に1日でも遅れていたら危険だったケースもあります。

(民医連新聞 第1837号 2025年9月15日号)

副作用モニター情報〈646〉 OTC類似薬の副作用(下)
 今回は、当モニターに上がってきている重篤な副作用の症例を紹介します。

症例1)ロキソプロフェン(OTC類似薬)によるアナフィラキシー
20代女性
 歯科治療にて抜歯後、メイアクト®とロキソプロフェン屯用で処方
開始3日目 喘息発作出現
開始4日目 蕁麻疹出現、受診し抗アレルギー薬処方
開始5日目 蕁麻疹悪化のため、メイアクトを疑い中止
(ロキソプロフェンは飲み切っていた)
開始6日目 夜間増悪、嘔気も出現。薬剤によるアナフィラキシー疑いにて入院となる。
DLST検査でメイアクト陰性

症例2)芍薬甘草湯(OTC類似薬)とアトルバスタチンによる低カリウム血症、横紋筋融解症
80代女性
アトルバスタチン10mg服用中
こむらがえりに芍薬甘草湯2g×1追加
30日後 K値2.8mEq/L(低K血症)
90日後 倦怠感の訴えあり
120日後 ひどい筋肉痛
180日後 腕が上がらず救急搬送
 K値1.5mEq/L、CK値9127U/L
 低K血症、横紋筋融解症の診断にて芍薬甘草湯とアトルバスタチン中止し、KCL注開始
中止10日後 K値、CK値正常値に回復

 芍薬甘草湯は1包に甘草2gを含有し他の漢方に比べて多く、低カリウム血症が起こりやすいことが知られています。さらに、低カリウム血症が形質膜の破綻を生じ、筋繊維が壊死し、横紋筋融解症を引き起こします。スタチンとの併用で急速にすすんだ可能性が考えられます。
 これらOTC類似医薬品が安全にひろく繁用されているのは、医療機関が有効性と安全性のバランスをとりながら使用しているためです。「安全な薬」との過信は危険です。

(民医連新聞 第1838号 2025年10月6日号)

■画像提供 奈良民医連 一般社団法人 奈良保健共同企画
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**【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や354の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

<【薬の副作用から見える医療課題】掲載済み>

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  1.民医連の副作用モニターとは~患者に二度と同じ副作用を起こさないために~
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用
  11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
  12.点眼剤の副作用
  13.消化器系薬剤の様々な副作用
  14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
  15.抗不整脈薬の副作用
  16.降圧剤の副作用の注意点
  17.トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)の副作用について
  18.脂質異常症治療薬の副作用について
  19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
  20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用
  21.抗甲状腺ホルモン剤チアマゾールによる顆粒球減少症の重症例
  22.過活動膀胱治療薬の副作用
  23.産婦人科用剤の副作用
  24.輸液の副作用
  25.鉄剤の注意すべき副作用
  26.ヘパリン起因性血小板減少症
  27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用
  28.糖尿病用薬剤の副作用 その1
  29.糖尿病用薬剤の副作用 その2
  30.糖尿病用薬剤の副作用 その3
  31.抗リウマチ薬「DMARDs」の副作用
  32. ATP注の注意すべき副作用
  33. 抗がん剤の副作用
  34. アナフィラキシーと薬剤
  35.重篤な皮膚症状を引き起こす薬剤
  36.投注射部位の炎症等を引き起こす医薬品について
  37.間質性肺炎を引き起こす薬剤(漢方薬を除く)
  38.漢方薬の副作用
  39.抗生物質による副作用のまとめ
  40.抗結核治療剤の副作用
  41.抗インフルエンザ薬の副作用
  42.ニューキノロン系抗菌薬の副作用
  43.水痘ヘルペスウイルス・帯状疱疹ウイルス治療剤の副作用
  44.薬剤性肝障害の鑑別
  45.ST合剤の使用をめぐる問題点
  46.抗真菌剤の副作用
  47.メトロニダゾールの副作用
  48.イベルメクチン(疥癬を治療するお薬)の副作用
  49.鎮咳去痰剤による注意すべき副作用
  50.総合感冒剤による副作用

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